雇用の維持

月次運用報告書「結い だより」に掲載している記事の一部をブログ形式でお伝えします。
(「結い だより」2020年5月号>「結い2101」運用報告>社会形成)



市場関係者から注目されている経済指標の1つに、米国労働省が毎月発表する「米国雇用統計」があります。
(1)米国は世界経済の中心で(2)個人消費の割合が大きい といったことを背景に注目されているようです。


この統計データには雇用動向に関する様々な数値が含まれますが、中でも注目度の高い失業率を時系列で見てみると、
・日本よりも米国の失業率の方が、変化が激しい
・2008年の金融危機で急上昇した後、失業率は減少傾向
・直近では、日米ともに失業率が増加
といった内容が読み取れます。
4/30現在、米国の失業保険申請者が過去に類を見ない水準まで増加しているため、今後の雇用統計も楽観視できるような状況ではないでしょう。
市場関係者から雇用統計が重視されている理由は、GDPや金利との関連性が高いためだと思われますが、社会の安定性といった観点からも雇用が充実していることは重要なことだと考えられます。
例えば、失業率が上昇すると特定の犯罪の発生率も上昇するという研究結果があります(※1)。「貧すれば鈍する」という言葉があるように、仕事がなくなって日々の生活で精一杯になってしまうことは望ましいことではないと個人的にも感じます。


さて、現在の厳しい経済環境下で営利企業はどのような行動をとるでしょうか。利益を出すことや株主に報いることを最重視する会社であれば、景気変動に応じて人員を調整することには一定の合理性があるでしょう。
そういった、人財の流動性が高い地域・業界・会社もあってもよいと思いますが、「結い 2101」では、社員を大切にし、他のステイクホルダー(利害関係者)との調和を図る会社へ投資することを基本方針としています。
長い目線で見れば、そのような会社が社会から必要とされ、持続可能な形で発展していくと考えるからです。


例えば、バッグなどの「モノづくり」を通じて「途上国」の可能性を世界中に届けることを目指す、マザーハウス。途上国の自社工場で雇用を創出しています。
代表の山口さんのnote(※2)を拝見しましたが、周りの工場が大量解雇をしていても、自社工場の雇用を維持する、むしろこの機に社員との絆を深める、という強い想いが感じられます。
また、投資先の中には現金を多めに持っている会社があります。「平時」の効率性だけを考えれば非合理的な経営に見えるかもしれませんが、「危機時」に大切な人財が流出してしまわないよう備えをしているとも考えられます。
引き続き「結い 2101」では社員をはじめとしたステイクホルダーを大切にする会社を応援していきたいと思います。


(※1)大竹文雄・小原美紀. 2010. 『失業率と犯罪発生率の関係:時系列および都道府県別パネル分析』
(※2)noteとはクリエイターとユーザをつなぐ(SNS・ブログのような)ウェブサービスです。
本コラムで言及した山口さんのnoteはこちらです。
https://note.com/eriko_yamaguchi/n/n4a89df47de99 

橋本 研一 (資産運用部 ファンドマネジャー)

2015年日系大手証券会社に入社。金融派生商品のリスク管理や国際的な金融規制対応を通じて、同社の資本政策に携わる。
2019年1月に鎌倉投信に入社。福島生まれ、東京育ち。