一問一答!運用報告会で受益者の皆様からいただいたご質問(その2)

先月号(結いだより123号6頁)に続き、「結い 2101」運用報告会で皆様からいただいた質問の中から、運用者として丁寧にお伝えしたいもの、受益者の皆様の関心が高いと考えるものを選び、回答します。

投資先各社の状況

 質問
現在買い付けを停止している銘柄はありますか?
 回答(資産運用部)
市場に出回っている株数の多寡(所謂 大量保有)といったような観点から追加購入を停止している先を除くと、ヤマトホールディングスさんのみを買い付け停止としています。
2018年に法人顧客の社員向け引越サービスで不適切な費用請求が発覚したためです。再発防止に向けた社内体制や商品性の見直し、経営理念の浸透等に時間がかかっていて、鎌倉投信では今後の動向を注視していきたいと思っています。進展がありましたら月次運用レポート「結いだより」などでお伝えします。

 質問
アドバネクスには、問題ありませんか?
 回答(資産運用部)
「匠」の技術力については引き続き評価していますが、ガバナンスについては注視しています。
株主総会の様子などから察するに、同社では、一部の関係者間で対立が生じている虞(おそれ)があります。「結い 2101」の運用方針「顧客・消費者、社員とその家族、取引先、地域、自然・環境、株主等を大切にし、持続的で豊かな社会を醸成できる企業」とずれがないか、対話などを通じて確認していきます。 

 質問
2期連続赤字で株価も下落している会社(カヤック)の売却は検討されていませんか?
 回答(資産運用部)
まず、基本的な考え方ですが、投資先の評価では「人」「共生」「匠」の着眼点に加え、会社としての「持続性」にも着目しています。赤字が続いて業績の改善も期待できない場合、事業性と社会性の両立ができていないと判断し売却することはあり得ます。
現在、カヤックさんについては、地域活性化への貢献意欲が高いと判断しているため、売却予定はありません。ご指摘のとおり、2018年・2019年と赤字が続いたこともあり、調査・対話を重ねています。ここ数年は特にゲーム事業で業績変動が激しい面がありましたが、足元では安定的に収益を出せるよう事業を選別しているなど、上場時に比べて会社が大人になってきた印象があります(それがよいことかどうかはまだわかりませんが…)。

 質問
環境を重視する企業は、LCAなどを実施して環境負荷などを評価しているのでしょうか?
 回答(資産運用部)
環境負荷について適正な対応を講じているかは、会社の規模や事業特性に応じた確認をしています。
用語の確認ですが、ライフサイクル評価(LCA:Life Cycle Assessment)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)またはその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法のことです。投資先では、例えばエフピコさんやTOTOさんなどがそういった計測をしています。また、投資先のアミタHDさんはLCAに限らず企業の環境戦略について助言をしています。アミタさんのホームページには環境に関する情報がよくまとまっており、私たちも企業調査の際に参考にすることがあります。

 質問
投資先の中で多分一番業績的にひどいのが「ライフネット生命」ではと思います。ずっと先行投資と言い続けていますが、赤字がこれだけ長くつづき、ファウンダーの岩瀬氏も出口氏も去り、事実上KDDIの傘下に入っているのが「現実」なのに、それでも「いい会社」というのは、些か無理があるのではないでしょうか?あくまでも投資である以上、利益をあげねば事業継続性にも疑問がありますし、これは相場の予測云々ではなく、「企業の経営」として問題があるのはと思うのですが。
 回答(資産運用部)
鎌倉投信では、引き続き「いい会社」であると判断しています。創業者の出口氏・岩瀬氏だけでなく、現社長である森氏の、経営力や常識にとらわれない商品・サービスを提供する姿勢にも高い評価をしています。
業績については、確かに会計上利益が出ていません。しかし、それは、生命保険の新規契約を獲得すると、最初に費用がかかって後から収入が生じるという、保険独特の収益構造に起因しています。会計上の利益では生命保険会社の実態を把握しきれないため、保険の契約数や生命保険会社の長期的な収益性を示す指標を確認しています。これらの数値は増加していることなどから、会社として順調に成長していると考えられます。
また、KDDIについては、出資比率が24.8%ですので、ライフネット生命保険さんの支配的な地位にいるとは判断していません。KDDIはライフネット生命保険さんの商品取扱い会社のひとつと捉えています。

 質問
ユーグレナが減収、赤字継続予想(※)ですが大丈夫でしょうか?
 回答(資産運用部)
一般的な傾向として成長期にはある企業には、投資が先行し利益が出にくい期間があります。ユーグレナさんについては、食品を中心としたヘルスケア事業では売上高が伸び悩んでいるため広告戦略を見直している段階です。バイオ燃料については今期から実証プラントが本格的に稼働し、数年かけて商業化していくので収益への寄与はもう少し先になると考えられます。
「結い 2101」では様々なタイプの企業を組み合わせて分散投資を実施しているので、仮に一社の業績が傾いたとしても、「結い 2101」の基準価額は大きく下落する可能性は低いのでご安心ください。ご参考までに、2020/6/30 現在、「結い2101」の純資産(約420億円)対比で各銘柄への投資割合は概ね0.95%です。
(※)5/15に従来の業績予想が取り下げられ、「未定」となっています。

投資先との対話

 質問
コロナ禍でテレワークや自宅勤務などでネット活用の重要性が増していますが、いまだに判子に拘る会社の為に出勤しなくてはならないという人が多くいます。法令上は必要無いものに拘る会社に対する働き掛けを鎌倉投信は株主の一員として何らかのアクションを起こせないのでしょうか。
 回答(資産運用部)
判子(ハンコ)の件に限りませんが、鎌倉投信は投資先に対して一律に何らかの基準を押し付けるような行動は原則おこないません。もちろん、対話の中で提言・助言することはありますが、「いい会社」の経営姿勢を応援していくのが基本姿勢です。
コロナ禍のような「変化」への対応力は投資の着眼点の一つであり、会社の持続性・成長性に影響を及ぼす重要な要素だと認識しています。現在、私たちはweb会議などを利用して投資先とコミュニケーションをとっていますが、テレワークなどを柔軟に取り入れている会社が多い印象を持っています。引き続き調査・対話などを通じてしっかりと確認していきたいと思います。

 質問
投資先の活動に加えて、鎌倉投信のエンゲージメント(※ここでは機関投資家が企業に対しておこなう「建設的な目的をもった対話」のこと)についてもう少し詳しくききたいです。
 回答(鎌倉投信)
一般的に運用会社がおこなうような、議決権行使や経営者との面談に加えて、投資先に、その発展に貢献できるような事業シナジーの提言をしたり、当社が投資先に対して経営や資産形成についての勉強会を開いたりといった活動をしています。投資先の企業価値の向上を通じて「投資家の資産形成と持続的な社会の発展」に繋げていきたいと思います。

 質問
投資先企業とはどのくらいの頻度で対話されていますか?
 回答(鎌倉投信)
投資先によります。傾向として、成長段階にある会社は短い期間で事業動向が変わる可能性があるので、頻度を高めてこまめに話を聞きに行きます。一方で、成熟段階にある会社に対しては、一年に一回程度コミュニケーションをとれれば十分と考えています。

その他

 質問
社債で現在投資しているものが2022年から順次満期で償還になっていきますが、非上場企業へ継続して投資続けるためにどう考えていますか?
 回答(資産運用部)
株式非上場会社への投資状況について細かくチェックしてくださり、ありがとうございます。社債への投資手法は継続しますが、非上場会社への投資手法については社内で検討を進めています。お伝えできるような段階になるまで、もう少しお時間をください。

 質問
社債の利回りはどのくらいですか?
 回答(資産運用部)
表面利率(債券の額面金額に対して毎年支払われる利息の割合)は概ね1~4%程度です。

 質問
毎月定額買い付けについて、特定日に全額ではなく、月間毎日均等にできないのでしょうか。
 回答(鎌倉投信)
申し訳ありませんが、外部の収納代行機関の対応力および費用的な問題等からご要望にはお応えできません。

 質問
他の投信では投資年数や資産規模に応じて、信託報酬の割引サービスがあります。鎌倉投信では、その予定はありますか?
 回答(鎌倉投信)
今のところ予定していません。一般的に個人投資家の資産形成において、信託報酬等を下げることは長期的なリターン向上に繋がります。鎌倉投信でも、できるだけ低水準の信託報酬で商品・サービスを提供することは、運用商品の重要な要素の一つだと認識しています(今のところ、市場指数等を上回ることを目標としないアクティブ運用の中では「結い 2101」の信託報酬は相当低水準です)。
一方で、「安かろう悪かろう」という言葉もあるように、安すぎても問題が生じる可能性があります。余りに低水準の信託報酬を設定してしまうと、企業の調査体制やお客様へサービス・情報を提供する機能が弱体化してしまいます。その結果、皆様の「投資の果実」が損なわれてしまっては本末転倒です。
鎌倉投信は、以上のような2つの側面を踏まえた上で信託報酬率を設定し、皆様に丁寧に説明した上で資産運用会社の事業活動を進めていきたいと考えています。

 質問
老後資金形成のために運用している方も多いと思いますが、今後取り崩しのシステムを構築していくお考えはありますか?
 回答(鎌倉投信)
社内でリバースモーゲージのような商品や個人年金商品について議論したことはあります。今後の課題とさせてください。取り崩しなどの仕組みについてもお客様の声を聞きながら、商品・サービスの向上を目指します。

 質問
鎌田さん(※鎌倉投信社長)にお伺いします。鎌倉投信がこれからの世の中に投げ掛ける「投資の持つ価値」とは何なのでしょう?
 回答(鎌田)
個人的意見ですが、お金や投資が持つ本質的な価値とは、人と人、人と社会、社会と経済をつなぎ、様々なものが調和の上に発展するための水脈です。そして、投資で成功するためには、お金を何に投資するかという自分なりの思想を持つことが大切です。そこでは、自分が大切にする想いや価値観に触れることもあるでしょう。投資の本質的価値とは、人と人とのよい縁を結ぶこと、さらには、自分自身が大切にする内面との出会いなのかもしれない、と感じています。