社長メッセージ「ポスト・コロナの展望」

鎌田 恭幸
鎌倉投信株式会社 
 代表取締役 社長


新型コロナウィルスの感染拡大の影響により世の中が一変して半年近くが経過しました。当社も、2月以降、非常時の業務運営体制(BCP)を続け、役職員の感染防止に努めた業務運営を継続しています。その一環で、対面で開催していた説明会等はすべてWeb配信でおこなっています。Webセミナーは、場所を問わず日本全国から参加いただける、チャットで気軽に質問できる、といったよさがあり、この機に取り入れてよかったと思っています。Webセミナーで寄せられる質問からは、やはりコロナ後の経済、社会についての関心の高さがうかがえます。鎌倉投信は、マクロ経済予測や市場予測を前提とした運用はおこなっていませんので、この点について個人的に感じていることをお伝えします。

グローバライゼーションで顕在化した潜在的リスク

約30年前の1989年、東西冷戦の象徴とされたベルリンの壁が崩れ、共産主義陣営だった東側の国々は西側の経済圏に組み込まれ、現在、社会主義体制にある国々の多くも経済重視の政策に舵をとりました。更に、情報通信技術の進化がその流れを後押しし、人、モノ、金、情報が国境を越えて自由に世界を駆け巡るグローバライゼーションが一気に加速しました。
しかし、お金で測る経済価値の規模的拡大を目的とする資本主義思想と、そこで生じた経済的問題を、マネーを供給するだけの金融政策で支え続けた結果、私たちは、以下の3つの不可逆的なジレンマに陥り、出口を見いだせないでいます。
  1. 実体経済を遥かに上回る規模に膨張し、縮小させることができなくなったマネーが、金融市場の振幅の度合いを大きなものにし、経済、社会を混乱させる火種になっている。更には、(特に日本に代表される先進諸国では)お金がふえても、金融市場の中に廻るだけで、実体経済において新たな事業創造に結びついていない。
  2. 経済合理性に重点をおく企業活動によって、生産機能がグローバルに細分化された結果、非常時に素材、部品、食糧等の供給が滞りやすい状況に陥っている。この構図は、何か問題が生じれば食糧や資源の奪い合いにもつながりかねない。
  3. 大気中の二酸化炭素等の温室効果ガスは、前例のない水準まで増加するなど、人の営みと地球環境とのバランスが崩れている。自然災害の発生頻度はふえ、その規模も年を追うごとに大きくなっている。地球温暖化と感染症の関連性を示唆する報告(※)も目につくようになった。
グローバライゼーションとは、本来、地球環境と人類との関係を含めた、あらゆる世界の調和の上に成り立つ高度な仕組みのはずです。しかし、今は、各国、人類の利益や利害がその根底にあり、不安定さが増しているように感じます。何かをきっかけにひとたび逆流を起こすと、経済のみならず社会をも麻痺させる大きなリスクが内在化しています。こうしたリスクは、時々に表情を変えて顕在化しますので、今回の感染症は特別なものではないことを認識する必要があります。

経済は、社会の安定があって、はじめて成り立つ

新型コロナウィルスは、それ自体が、経済活動に直接的な被害を及ぼしたわけではありません。人の命や生活、すなわち社会に甚大な影響を与えたことで、結果的に経済が機能しなくなっているのです。ここで感じることは、「経済は、社会の安定があって、はじめて成り立つ」ということです。言葉を換えれば、社会の安定を損なう経済・企業活動は、「たとえ、儲かるからといっても、おこなってはならない」ということでしょう。社会と経済をつなぐ役割を担う企業の社会的責任の本質とは、本業を通じ、全体観をもってその調和を図ることであって、決して自社の利益の最大化を目的化することや、得た利益の一部を社会還元する類のものではないのです。

経済や企業活動、社会の在り方は、どう変わる

今までのように、モノ、サービスを効率的に拡大再生産させて金銭価値、経済価値を高める、という従来型の資本主義の発想は、見直さざるを得ないでしょう。人の暮らしや生命の安全と安心を創造する、もしくは、そうした考えを土台に据えた経済活動、社会性と経済性のバランスが求められる、と感じます。それは、仮にコストがかかったとしても、リスク控除後の収益で測れば、必ずしも非効率とはいえず、持続性はむしろ高まるでしょう。

そうした観点からみれば、従来型の資本主義経済の中で生まれ、今回のコロナ禍や頻発する自然災害等で表面化した社会課題を解決する事業、例えば、医療、環境、食糧、防災、働き方のプラットフォーム、大都市集中型の経済・社会システム等を構造的に変えてゆく事業への期待は、コロナ終息後も変わることはないでしょう。これらは、人の営み、社会、自然、経済との調和を図る上で、必要不可欠な事業だからです。

こうした事業分野がどれだけの市場規模を持つか、あるいは個々の事業がどれだけ成長するかの予測は困難です。しかし、様々な先端技術、知恵と工夫を用いて社会課題を解決し、社会、経済構造の転換をうながす会社は、間違いなく「これからの社会に必要とされる会社」だと考えます。お金で測る経済の規模的拡大ではない、ポスト・コロナに向けた新たな経済思想が求められているように感じます。

鎌田 恭幸

(※)環境省 地球温暖化の感染症に係る影響に関する懇談会「地球温暖化と感染症」等

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