社長メッセージ「ポスト・コロナの展望②」

道理にかなった ただ一つの反応は「道徳」である

私の郷里 島根県は、新型コロナウイルスの感染者が少なかったのですが、先月、県内の高校サッカー部で集団感染が発生し、校長が深々と謝罪する姿が全国ニュースで報じられました。
批判の声があがる中で、現在ブラジルで活躍するプロ・サッカー選手 本田圭佑さんの感染者を気遣う次のツイートには、多くの共感の声が寄せられ、私も勇気づけられました。


「高校、およびサッカー部の皆さん、コロナ感染に関して謝罪する必要なんてないよ。
対策してても感染する確率を0にはできんから。それより熱とか体は大丈夫?
今はしっかり食べて休んでな。また治ったら夢に向かって頑張れ。非難してる人だけでなく、心配してる人も沢山いることを忘れんといて」


このメッセージは、「新型ウイルスのパンデミックに対する唯一つの道理にかなった反応は『道徳』だ」と話すドイツ人哲学者マルクス・ガブリエル氏に通じると感じました。
「道徳的によい」とは、感染者を不道徳だと攻撃することではない。「どんなに注意してもウイルスに感染することはあり、それは道徳とは何の関係もない。
道徳的な行動とは、誰かが感染したらその人が元気かどうかを心配してあげること」と、同氏は語ります(8月20日付 毎日新聞「記者の目」)。

「善」を価値基準にした経営が危機解決につながる

そして、ガブリエル氏が、著書(※)の中でこれに通じるものとして述べている

「他者や環境との関係の中で何が善(道徳的)であるか」を価値基準にした倫理的な資本主義、企業経営の在り方(「モラリティの資本主義」)こそが人類が直面する危機の解決につながる

とする考え方にポスト・コロナ社会が目指すヒントがあるように思います。
コロナ禍で経済が落込むのと逆行して評価を高めている企業は、この種の「善」を価値基準に経営しているように思うからです。

例えば、「がんばるな、ニッポン。」のテレビCMでも話題になったサイボウズは、「100人いたら100通りの働き方」を実現させ「チームワークあふれる社会を創る」という想いでつくった社内ネットワークサービスが、テレワークに必要不可欠なインフラとなりました。

学力や所得、家庭環境、地域格差などによって十分な教育を受けることができない子どもたちのためにWebで教育サービスを提供するすららネットは、様々な教育現場から必要とされるようになりました。

環境と健康に配慮した「安心して自分の子どもに食べさせられる食材」を届けるオイシックス・ラ・大地は、巣ごもり需要でその事業が改めて評価されました。

こうした会社の経営は、子育てや介護をしながら働く人、田舎で暮らしたいと思う人、自分の能力を他でも活かしたいと考える人、学びたくても学ぶ機会を持てなかった人、日本の農業・環境を守ろうとする人等、従来の社会・経済システムの中で本気で向き合いきれていなかった方々と社会・経済との新たな関係性を築いたビジネス、とも解釈できるでしょう。
このことは、ガブリエル氏がいう環境、社会との関わりにおいて何が本当の「善」なのか、を価値基準に据えた経営である、と感じるのです。

「本当にモラリティを売っている会社があったならば、その会社は持続可能な巨大企業になるでしょう」

同氏のこの予言が、現実のものになるかどうかはわかりません。
しかし、「善」を価値基準に据えた経営思想は、混沌とした時代における道筋を照らす光であると感じます。

鎌田 恭幸


(※)世界史の針が巻き戻る時「新しい実在論」は世界をどう見ているか(PHP新書)

ポスト・コロナの展望 ①はこちら

鎌田 恭幸
鎌倉投信株式会社 
 代表取締役 社長