東証システムトラブルの啓示

皆様、こんにちは。鎌倉投信の鎌田恭幸です。
いつも鎌倉投信のメルマガを読んでいただきありがとうございます。

「眼前の破局は天の啓示であり 天訓である」

第二次世界大戦で日本が敗れた昭和20年8月15日の翌日、松下幸之助氏が社員に向けて語った言葉だそうです。日本中が絶望の淵に突き落とされた最中に発せられたこの言葉には、松下氏の、どん底から這い上がる信念を感じます。

話は変わり、先日の東京証券取引所のシステムトラブルは、前代未聞の出来事だったといえるでしょう。メモリ故障とバックアップ機への自動切換え不具合に起因するものでしたので、短期間でトラブルは解消し、さいわいにも致命的な影響には至りませんでしたが、原因によっては更に大きな混乱につながりかねずヒヤリとしました。

これが何かの啓示、と感じるのは、大げさでしょうか。直接的な関係はないとしても、こうしたシステムトラブルの背景には、瞬時の値動きをとらえて1秒間に数千もの売買を繰り返す高速回転取引システムの開発に世界中の取引所がしのぎを削る、行き過ぎた競争と無縁ではないように思えるからです。

証券取引所で取引をする市場参加者には、長期志向の投資家もいれば超短期志向の「投機家」もいます。企業との対話を大切にする投資家もいれば、株価だけに着目する投資家もいます。こうした多様な参加者のニーズを全て包含して、健全に取引を成立させることが証券取引所の役割といえます。

しかし、その役割に、自らはどのような取引市場をつくり社会に貢献するのか、という思想信条、いわば取引所としての「志」が不要かといえば、答えは「否」でしょう。
証券取引所の本来の使命は、実体としての経済活動の発展、国民の豊かな営みに資することであって、東証自身が掲げる企業理念である「豊かな社会の実現に貢献すること」のとおりです。
実体としての経済や企業活動の発展に貢献することのないマネーゲームを膨張させる高速回転取引システムは、株価の価格変動性を高め、サイバー攻撃などによる潜在リスクを高めることはあっても、「豊かな社会の実現に貢献すること」につながりにくいと考えます。

歴史の中で繰り返される金融危機は、実体としての価値と、資本市場における取引価格とその総量とが大きく乖離した時に生じる、という点で共通しています。今回のシステムトラブルは、二度と金融危機を起こしてはならないという天の啓示であり、真に社会、経済に貢献する金融への回帰を促す天訓として心に刻みたいと思います。

(本記事はメールマガジンの再掲です)

鎌倉投信がお届けする「心を結ぶ」メールマガジン。是非ご登録ください。
登録フォームはこちら