【報告】「いい会社の経営者講演」株式会社ツムラ 「順天の精神 ~天地自然の理法に従う理念経営~」

2020年9月28日、株式会社ツムラ 代表取締役社長 加藤 照和様をお招きし、「順天の精神 ~天地自然の理法に従う理念経営~」をテーマに講演いただきました。
月曜夕刻での開催でしたが、オンライン開催ということもあり、全国各地から約100名の方にお申込みいただきました。本記事では、催しの一部をお伝えします。
「結い2101」ではツムラに「人」のテーマで2010年から投資をしています。
詳細は、当社HPでご覧いただけます。
https://www.kamakuraim.jp/document/the-company-finder/detail/---id-22.html

目次
  • 講演の部(加藤社長より)
  • 鼎談の部
  • 受益者の皆様から質疑応答

それではいよいよ、加藤社長の講演がスタートです!

【講演】

◯ツムラの歴史

「良薬は人や社会のお役に立ち、必ず売れる」
同社は1893年(明治26年)中将湯本舗津村順天堂として日本橋に創業しました。初代創業者の津村重舎が「良薬は人や社会のお役に立ち、必ず売れる」という信念のもと、「中将湯(チュウジョウトウ)」という婦人薬を販売したのが歴史の始まりでした。

しかし、創業から2年後の明治28年に漢方医学は帝国議会で排斥され、西洋医学が医師のライセンスとして唯一認められるものとなり、漢方の医学を志した医師や研究者がどんどん減るという衰退の時期を迎えます。それでも創業者たちは「中将湯」から出発し、和田啓十郎や湯本求真を初めとする先生方が、脈々と漢方を伝承し、患者さんを治療していきました。

結果として1976年(昭和51年)に薬価基準に収載、保険にも適用され、医療用医薬品としての使用が可能になりました。漢方医学の排斥から薬価基準収載まで、実に81年かかっています。

◯漢方医学の特徴

漢方医学は、人間がもともと持っている自然治癒の力を高め、症状の改善を促すという考え方の医学です。漢方医学には「心身一如(しんじんいちにょ)」という言葉があり、心身のバランスを整えていくことを大切にしています。


「漢方は日本の伝統医学!?」
「漢方」という名の由来ですが、江戸時代にオランダから鉄砲などとともに蘭方(現在の西洋医学)が伝えられ、それと区別をするために当時中国王朝は漢の時代であったことから「漢方」と名付けられました。

漢方は中国の医学じゃないの?とおっしゃる方もいます。中国起源の伝統医学が発祥ではありますが、漢方は5~6世紀頃に、日本に伝来し、江戸時代までの間に“日本の伝統医学”として独自に発展してきたものです。


「同病異治・異病同治」
漢方医学における考え方として、「同病異治」と「異病同治」という考え方があります。「同病異治」とは病気に対してではなく、症状に対して処方をするため、同じ病気でも人によって違う治療をするということです。「異病同治」とは違う病気を同じ薬で治す。たとえば、「葛根湯」は風邪の引き始めにも使われますが、整形外科などでは肩の痛みの改善を期待し処方されます。


「ばらばらを均質に」
漢方の原料となる生薬は植物などの天然物を原料としているため、同じ品種であっても成分がばらばらです。
漢方にはいまだ特定できていない物質まで入っているため、成分を均質にした医薬品をつくることは非常に技術がいることなのです。

◯漢方医学教育の推進

漢方医学は明治時代に排斥された医学であったことから、学校で学ぶことができませんでした。そのため、ながらく日本には漢方の知識を持った医師がいませんでした。そんな背景もありツムラは1997年から漢方医学の教育支援をおこなっています。現在は、日本の全ての医学部、医科大学で漢方医学教育が進んでいます。

◯大切にしていること

「“良薬”=品質へのこだわり」
医薬品のなかでも合成薬は工業製品化されているので、均質にすることはそんなに難しくありませんが、天然物を原料とする漢方薬は大変難しいです。ワインでたとえると同じシャルドネという品種でも、産地、栽培者、生育年数によって出来栄えが違います。それによって価値価格も違ってきます。

医療用医薬品は価格を変動させる訳にはいかない一方、常に品質を保たなくてはなりません。ここにツムラの最大のノウハウがあります。中国にはたくさん生薬市場がありますが、ツムラはそこから一切調達をしていません。それでも、天然物にはばらつきがあります。農家と契約をし、同じ産地から長期で栽培したものを使っていくため、品質が担保できているのです。


より詳しく知りたい方は、オンラインサービス「My鎌倉倶楽部」に動画を掲載しましたので視聴ください。
https://myclub.kamakuraim.jp/Portal/Account/Login

【鼎談】

当社資産運用部長 五十嵐より
Q. 中期経営計画でテーマとして掲げる、「漢方のイノベーションによる新たな価値の創造」について、イノベーションを生み出すために具体的に注力されていることは何ですか。


A. 漢方のイノベーションはいろいろな場面であります。たとえば、製造は工業製品ではなく天然物なので、形や固さも様々です。こういったものを自動化するというのは前例がありません。しかし第3期中期経営計画ですべての工程を自動化できました。既存のロボットを買って生産ラインに入れるということではなく、自社の技術者とパートナー企業とともにその開発段階から10年単位で取り組んでいます。

さらに上流には、生薬を栽培したものを集めてきて選別・加工するという工程があります。中国の農村部で1次加工・選別がされたあと、ツムラの中国工場、日本工場でも選別を行っています。これにはAIと顔認証の技術を導入しています。工業製品ならすぐできますが、バラバラなものをいかに「合格なもの」と「不合格なもの」に区別してラインに流すか、これも技術開発から取り組んでいます。将来は畑で生薬と雑草を区別して、雑草だけ抜いていくロボットを開発して、農業を楽に生産がたくさんできるような効率性の高い産業にしていきたいと思っています。

次に、販売についてですが、漢方は多成分であるためにその科学的なエビデンス・作用機序は、現代医療の評価システムには乗りません。しかし技術の発達とともに多成分の分析ができるようになってきました。この分析技術を確立しながら、有効性と安全性をきちんと担保していきたいと思っています。
当社社長 鎌田より
Q. サラリーマン人生に脂がのってくる時期の30代に、会社としては大変な負債を抱えて、事業の多角化で失敗もあったかと思います。(事業再生に取り組むなかで)大変なご苦労もあったと思うのですが、苦しみを乗り越える上で糧にしたものは何ですか?

A. 苦しみながら、「何がいけなかったんだ?」と考えたことです。誰が悪いと責任を追及する訳ではなく、「企業としてこんないい事業をやっているのに、また、本業である漢方事業にも社会的価値があり、需要も伸びている中で、どうしてこんなに苦しむことになってしまったのか」をひたすら自問自答しました。

そのとき考えたことが根底にあって、正しいことを正しく事業として展開することが、どれだけ重要で、かつ言葉にするほど簡単ではないと感じ取りました。そこでの経験が大きな財産になっています。


鎌田:
Q. 非常にダイナミックな人事を芳井さん(ツムラ先代社長)がされました。取締役から社長に就任されて、食事をご一緒した当時、加藤社長は責任の重さを感じられていたように思います。

そのときにおっしゃられていた言葉で「私には芳井のようなカリスマ性はありません。とにかく理念浸透をやるんです。一人一人が理念に忠実に動く会社になれば間違いなく成長します」という言葉が非常に印象に残っています。当時を振り返ってみても言われたことを実践されていると思います。8年ほどを振り返ってみて、どうですか?
A. 当時、社長が芳井から私になったとき、株価が急落したんですね。かなり下がったんです。きっとみなさん「この社長は大丈夫か?」と思ったのでしょう。その影響で私よりも家内が具合悪くなってしまって(笑)。株価を見るたびに具合が悪くなるんです。

その後、理念とビジョンとそれに基づいた中期経営計画を出させていただいて、投資家とのコミュニケーションによってだんだんと市場に理解いただけました。
創業者に始まり、明治の時代に排斥され、バトンをつなぎ、81年掛かって薬価収載なんです。この81年の重さです。患者さんのため、日本の伝統医療を守っていく責務があります。

【受益者の方からの質問】

お寄せいただいた質問の中から一部を紹介します。
Q. バブル期の経営危機を経験していない社員の方々にとって、健全な危機意識として今も受け継がれていることは何でしょうか?

A. その時代を知る社内の人間は「不祥事に時効なし」というスローガンを掲げています。会社として起こした不祥事もあります。多角化の失敗だけではないです。業績が悪化することに対して、正しくやっていなかったこともありました。現在創業127年目になりますが、125周年の時に会社の歴史をまとめた社史とともに、会社の不祥事をまとめたDVDを作成しました。そして、これを全社員が見ました。

失敗から目を逸らせてはいけません。人間だから失敗することはありますが、同じ失敗は許されません。「二度目はない。二度とこのようなことが起こる企業体質を作ってはならない」

そのためにも順天の精神があり、一人一人が理念に基づく判断ができる企業集団を目指すべきであるということを、125周年を機にあらためて共有しました。社内で臭いものに蓋をすることは一切していません。今でも課題がありますし、厳しい状況はありますが、それも全部きちんと理解をした上で、国民の皆様、患者様にどうやって応えていくかを考えていく機会を作っています。

他にも、「加藤社長が結い 2101を知ったきっかけは?」「漢方の名前が分かりにくいのですが…」など様々な質問があり、活発な質疑応答がありました。

【まとめ】

今回は「結い 2101」が初期から投資しているツムラの加藤社長に登壇いただきました。加藤社長は全ての質問に対して余すところなく、真摯な姿勢で回答くださいました。また、印象に残ったことなどをお手元に書き留める様子などからも、受益者の皆様に加藤社長のお人柄・誠実さが伝わったのではないかと思います。

「良薬は人や社会のお役に立ち、必ず売れる」

今の日本に漢方が存在していることは、同社がこの信念を代々受け継いで守ってきた証であると思います。
ウィルスなどによって健康が脅かされる世の中ではありますが、東洋医学の発展とともに、みなさまが健康でありますことを願っています。

※株主の方をご招待していた漢方記念館ですが、コロナウィルスの関係もあり今年はバーチャル漢方記念館として訪問いただけます。ぜひ、以下のリンクにお立ち寄りください。

バーチャル漢方記念館

(鎌倉倶楽部 杉本)

月次運用報告書結いだより128号掲載
「いい会社」企業情報