運用コラム「シャープレシオ再考」

昨秋に開催した運用報告会で以下のような質問がありました。

質問: シャープレシオが高い方がよいというのが分からないです。

①平均リターンが同じでもシャープレシオが異なる場合に、シャープレシオが高い方がよいのはなぜでしょうか?
②特に分かりにくいのは、毎月定額投資をした時に、シャープレシオが低いということは安値で買うチャンスもあること、シャープレシオが高いというのは毎月ほぼ同じ基準価格で買うことだと思うのですが、それでもシャープレシオが高い方がよいのでしょうか? 
(質問原文を一部改変)

簡潔に回答しますと
「シャープレシオは高い方がよい(ただし万能ではない)」
となりますが、ここではもう少し掘り下げて考えてみます。


質問①について

シャープレシオとはリターンをリスク(=価格のブレの大きさ)で割った値ですので、質問の内容を言い換えると
「リターンが同じ場合、なぜリスクが小さい方がよいのか」
となります。それに対する答えは
(1)一般的にリスクが嫌われ者だから
(2) 数学的にも過大なリスクは好ましくないから

です。

(1)について例を通じて説明します。
(A)確実に100円が貰えるゲーム
(B)50%の確率で200円を貰え、50%で何も貰えないゲーム
という2つのゲームがあったときにどちらを選択されるでしょうか?この2つのゲームをそれぞれ何回も繰り返すと、一回あたりの貰える額の平均はA,Bともに100円に落ち着きます(つまり平均リターンが同じ)。

一方で、Bには貰える額のブレ(リスク)がともないます。このブレを回避したい人はAを選ぶわけです。このブレを回避したいかどうか、回避したい度合いがどれくらいかは、状況や人の好みに依ります。

当然、このゲームの例だとブレが大きいBを選択する方もいると思われます。100円ではなく200円を調達できないと何かまずいことが起きるといった状況に置かれた場合や、これくらいの少額であればリスクをとることが好きと感じる場合には、ある意味で合理的な選択とも考えられます。

一方で、資産運用では将来使うための(あるいは家族に相続させるための)大事なお金を形成しているわけですから、先ほどの100円規模のゲームとは訳が違うと私は思います。ですので、リターンに対してどれくらいブレ(リスク)を抑えられているかを測る、シャープレシオという指標を見ているわけです。

(2)についてはやや複雑ですが、(1)より重要な観点だと考えます。個々の事情(リスクに対する好き嫌いなど)を超えて、定量的に考えてもリスクは好ましくないものと結論づけられるからです。実はシャープレシオという指標は万能ではなくて、シャープレシオが同じでも、リスクを高めすぎると、長く保有すればするほど元本割れする確率が増す(≒リターンの中央値が小さくなる)ことが、とある前提の下ではわかっています。

理由を直感的に説明すると、リスクが高すぎると大儲けする可能性もある反面、立ち直れない程のダメージを受ける可能性がそれなりにあるためです。昨今はリスクを大きくとるレバレッジ型の金融商品がありますが、過度にレバレッジをかけると長期的に報われない可能性が高まることは注意すべきと思います。


質問②について

「リターンの目線が同じならば、リスク(価格のブレの大きさ)が大きい(シャープレシオが低い)方が、安値で買うチャンスがあるので、よいのでは?」という意図の質問だと理解しています。やはり、リターンの目線が同じであればリスクが大きいことは好ましくない、というのが回答です。理由は質問①への回答で挙げた2点に加え、
(3)大幅に下がった価格が戻るとは限らないから
です。

株式市場ではその時々に得られる情報がおよそすべて価格に反映されていて、短期的には上がる確率と下がる確率が概ね5分5分である、という考え方があります。この考え方に基づくと下がった後は上がるという前提でリスクが高い商品に手を出すことに合理性はないことになります。

また、仮にこの考え方に反して、「下がった後は上がる」という法則が過去に成り立っていた(ように見えた)としましょう。この場合に注意しないといけないのは、過去に成り立っていたことが将来にも成り立つのか、ということです。自然界の法則については、今日の法則は明日も通用するだろうと考えることに大きな違和感はないと思います(例えば今日も明日も1年後も「太陽は東から登って西に沈む」でしょうから…)。一方で、金融市場は人間が作り出したもので、自然界のような一貫した法則に基づいていると考えてよいのか、非常に不確かで、合理的な説明がつきにくいものだと私は思います。

以上を踏まえて、長期的な資産形成にとって合理的とされる投資行動をまとめると、
・シャープレシオが高い(と見込まれる)商品を選ぶ
・シャープレシオが同じであってもリスクの絶対水準を上げすぎない
となります。以上、読者の皆様の資産形成の一助となれば幸いです。
(資産運用部 橋本)

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月次運用報告書「結いだより」132号掲載