5つのトレンド(8)~変化の速い時代に求められる経営要素~

最近、昨年のダボス会議(世界経済フォーラム)でテーマとなった「ステイクホルダー資本主義」という言葉をよく見聞きするようになりました。これは、「企業は、社員、取引先、顧客、地域社会といったあらゆるステイクホルダーの利益に配慮した経営をおこなうべきである」とする経営思想です。つい最近まで米国等で常識とされてきた、「企業経営はもっぱら株主の利益を優先すべきである」という「株主資本主義」と真逆の概念といえるでしょう。

いま、世界の富の80%以上を1%の富裕層が持つといわれています。こうした経済格差が一段と広がる中で、世間批判を避けるためのカモフラージュにすぎない、といった厳しい見方もあります。確かに、ダボス会議に参加するような世界の名だたる企業は、その社会的責任を標榜しながらも、気候変動、貧困、人道的問題等に真剣に向き合ってきたか、と問われれば、NOと言わざるを得ないでしょう。
しかし、こうして世界のトップリーダー、投資家、個人の消費者を含めて社会全体の利益に目を向け始めたことは歓迎したいと思います。

鎌倉投信の「結い 2101」は、設定当初(2010年3月)から「いい会社」を観る大きな視点として次の二つを掲げてきました。
一、これからの日本に本当に必要とされる会社
二、社員とその家族、取引先、地域・自然環境、顧客・消費者、株主を大切にし、持続的で豊かな社会を醸成できる会社になろうと経営努力をしている会社
です。

具体的には、「これからの日本に本当に必要とされる会社」とは、日本や世界が多くの社会課題を抱え、社会や経済のあり方が問われる時代にあって、モノやサービスをただふやしたり、短期的な利益を目指すのではなく、「社会が抱える様々な課題を本業の中で解決したり、改善させる視座をもって事業を創造し、本業を通じて社会の質を高めることに挑戦する会社」です。

二つ目で謳う会社とは、特定の人が誰かの犠牲の上に利益を享受するのではなく、「会社に関わる全ての人の幸福を追求しようと努力している会社」です。これは、「ステイクホルダー資本主義」の概念に通じるかもしれません。

そして、これらの二つは、予測困難で変化の速い時代において、会社が持続的に成長するための大切な経営要素ともいえるでしょう。
「わが社は誰のために、何のために存在するか」、「これからの社会に本当に必要なものは何か」を探究し続けることは、未来を予見する感度を高め、未来社会に求められる商品やサービスを生み出す源(みなもと)になるからです。

また、前回のメルマガのとおり、価値を創造する経済や組織の構造は、かつてのピラミッド型からネットワーク型に変わりつつあります。こうした構造変化の中では、自社単体の閉じられた思考から価値を創造することが難しくなる一方で、顧客や取引先、異なる業態、場合によってはライバル会社とも協業しながら社会全体の利益を創出することが、結果的に自社の利益につながる時代になりつつあります。全てのステイクホルダーを大切にするとは、単に社会に貢献するという狭義の意味合いではありません。価値、すなわち利益を生み出す源泉そのもの、といえるでしょう。

会社は、様々なステイクホルダーと価値創造の関係性を如何につくるか、という個社を超えたマネジメント力が問われる時代になったと感じます。そして、会社が目指すものは、個社の利益ではなく、社会全体の豊かさの総和である、と真に自覚する会社が生き残る時代になったと感じます。
(つづく)
鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸

(本記事はメールマガジンの再掲です)
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