ESG投資と「結い 2101」(その5)~ESG視点「G」と「人」健全な危機感~

(本記事は毎週金曜日に発行しているメールマガジンの再掲です)
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前回に続き、ESG投資の「G」、「Governance:ガバナンス」と「結い 2101」の評価視点「人・共生・匠」のうち「人」との関係性ついて考えてみます。

先週のメルマガでは、「G」は、会社の持続性を高める上で重要であることに違いないが、表面的な枠組みを作るだけでは機能せず、経営者の思想が込められ、「健全な危機感」と「経営革新能力」を働かせることが大切であると、書きました。「結い 2101」のテーマ「人」の評価視点でいえば、主に「経営姿勢」を量るポイントでしょう。今回は、その中の「健全な危機感」についてふれたいと思います。

一言で「健全な危機感」といっても観方は多様ですが、私に深い気づきを与えてくれたのが、2012年秋に鎌倉の建長寺で開催した「結い 2101」受益者総会でのことでした。世界最速のプラスチック射出成形品取出ロボットを製造・販売するユーシン精機 小谷眞由美社長(当時)と受益者とのやり取りです。

「名門企業の不祥事が相次ぎ、今、企業の信用が揺らいでいます。ユーシン精機にとっての信用とは何ですか」、との受益者の問いに、小谷社長は、一瞬の間をおき、このように答えました。

「信用とは約束を守ることと違いますか」、と。

静かに、しかし信念に満ちた口調で発せられた一言に、会場が水を打ったような静けさに包まれた光景を、今でも鮮明に覚えています。

リーダーの「約束を違(たが)えない」という信念、言行一致の強い姿勢は、周囲にも影響を与えます。そして、約束を守ることへの自覚は、自ずと主体的に責任を果たす意思を宿し、信頼醸成の礎となって組織に浸透します。

更に、そこに利他的精神が合わされば合わさるほど、交わした約束の範囲を超えて、顧客や取引先、社会の潜在ニーズを感じ取る力を高めることにもなるでしょう。逆に困難に直面した時には、共に力を合わせて乗り越える原動力となり、外部の協力も得られやすくなるでしょう。

一定の規模に成長した会社の場合、外部環境の変化によって存続の危機に陥ることは稀です。その真因の多くは、組織における危機感の希薄化、慢心や油断でしょう。

そして、危機感の希薄化を生じさせる根本原因は、組織に属する人の主体性の欠如、他責型の人がふえることにあります。「約束を守る」とは、責任への自覚、主体性を喚起し、結果的に、健全な危機感を醸成し「存続の力」になることなのだと、小谷社長から教わりました。

しかし、主体的責任意識は、指示命令や威圧によって培われるものではありません。経営者が発する真摯な言葉や態度、厳しさを持ちながらも人への畏敬の念を決して失うことのない姿勢なくして育つことはないでしょう。そのように突き詰めて考えれば、主体的責任意識の醸成、そのもととなる社員一人ひとりとの信頼形成に向けた経営者の自覚と努力こそが健全な危機感の源流であり、「G」の大元をなす、と感じるのです。

次回は、「G」と「人」経営革新能力との関係性を考えてみます。
(つづく)

※「受益者総会」は鎌倉投信の登録商標です
鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸


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