ESG投資と「結い 2101」(その6)~ESG視点「G」と「人」経営革新~

(本記事は毎週金曜日に発行しているメールマガジンの再掲です)
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前回に続き、ESG投資の「G」、「Governance:ガバナンス」と「結い 2101」の評価視点「人・共生・匠」のうち「人」との関係性ついて考えます。

先週のメルマガでは、健全な危機感は、表面的な枠組の整備に留まらず、実際に会社の持続性や中長期的な企業価値を高める力になり、「G」を機能させる大元をなすことについて述べました。今回は、「G」を機能させる上で欠かすことのできないもう一つの要素「経営革新能力」について考えたいと思います。
この能力もまた、「結い 2101」の評価視点「人」の中の着眼点「経営姿勢」で量られる要素でしょう。

会社にとっての「存続」は、会社の存在目的、社会的責任を果たすうえで必要な条件です。そのためには、変化する時代環境の中で適応し続けられるように事業を進化させ続けなければなりません。

「経営革新」とは、事業の寿命を会社の寿命にしないための挑戦であり、私がしばしば教えを乞う相談者の一人でもある栗原清一さん(クリロン化成 代表取締役社長)の言葉を借りれば「現在の顔をした過去との戦い」、といえるでしょう。

例えば、今月発刊した「結いだより」で紹介する「いい会社」 第一稀元素化学工業は、創業から一貫してレアメタルの一種「ジルコニウム」に特化した商品を開発し続けています。

そして、ジルコニウムが持つ多様な特性を活かし、防水材から始まった事業は、鉄鋼の鋳造用から自動車の排ガス浄化触媒用など、各時代の花形産業に対応し続けた結果、ジルコニウム化合物トップメーカーとしての地位を築きました。今はさらなる時代変化に合わせて、燃料電池用電解質の原料や、リチウムイオン電池正極材添加材を提供するなど、世界のエネルギー革命の一翼を担い、社会的課題の解決に貢献しています。

また、「結い 2101」の投資先の「いい会社」で、つねに不可能に挑戦しつづけることへの決意を表した「不への挑戦」を経営理念に掲げ、高度な超精密微細加工技術を持つ金型メーカー「鈴木」は、技術の進化と共に、得意とする自動車分野から半導体分野、更には医療分野へと事業領域を拡げてきました。

「経営が厳しかった時期、社員に随分と苦労をかけた。そのような思いは二度とさせたくない」同社の鈴木社長から経営革新に向けた覚悟の原点を伺った時、胸が熱くなったものです。

経営革新とは、人、お金などの限られた経営資源を、どの分野に、いつ投入するかの決断に他なりません。そのため、経営者には冷静な分析力と判断力が求められる一方で、「いつ」については、ある種の「直観力」、優れた経営者がしばしば用いる言葉でいえば「運」、が求められるようにも感じます。
これらは「経営者の資質」といえるかもしれません。

その一方で、経営革新の要素を細分化すれば、大きな「革新」につながる日々の「改革」、「改善」のレベルがあり、これらは常態化した組織活動の中で営まれるものです。こうした日常での取組みも含めて広く「経営革新」を捉えるとき、改めて栗原さんの言葉を借りれば「経営革新能力とは、既存習性から脱却できる能力」に他ならない、といえるでしょう。

そして、経営革新にはもう一つの側面があります。革新を創出する組織的側面です。すなわち、全ての革新の原点となる「自由闊達で創造的な議論ができる組織風土の醸成能力」です。

「結い 2101」の投資視点「人」、その着眼点となる「社員個人の尊重」「企業文化」「経営姿勢」は、究極的にはこの能力において発揮され、会社の持続的成長を支える「G」の重要な機能を担うことになります。

次週は、「G」と組織風土について考えます。(つづく)
鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸


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