ESG投資と「結い 2101」(その9)~ESG視点「S」と「人」~

(本記事は毎週金曜日に発行しているメールマガジンの再掲です)
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今回は、ESGの2つ目のテーマ「S」、「Social:社会性」と「結い 2101」の評価視点「人」との関係性について考えます。これは難しいテーマで、鎌倉投信として十分に整理できている訳でもないので、個人的な視点で説明したいと思います。

会社に求められる社会的責任の一つは、まず、「雇用を生み、それを維持したりふやしたりすること」です。この経済的役割について異論を唱える人は少ないでしょう。その上で、より大切な社会的責任とは、「会社の活動を通じて、人と人、人と社会を結びつけることによって個人の成長と、社会への貢献につなげる機会を提供すること」にある、と繰り返し述べてきました。

では、「個人の成長と、社会への貢献につなげる機会の提供」とは、社員からみればどのような言葉に置き換えられるでしょうか。一例ですが、「仕事のやり甲斐を感じ、自己の成長や社会への貢献を実感できる会社」などではないでしょうか。私は、そうしたことを実感する社員が一人でもふえるための会社の取組みこそが「S」の本質的命題の一つである、と感じています。

「そもそも会社には、経営理念を共有しながらも、同じ個性を持つ人は一人として存在しない。すべての人は異なる能力・才能・人間性を持っている。その多様な個性を尊重し合い、いかに組織的に統合して高めるか」、という観点が重要であると思っています。「結い 2101」のテーマ「人」の着眼点でいえば、「個人の尊重」で量る点でしょう。
「会社経営とは、会社に関わるすべての人の幸福の探求である」、と思うのです。

しかし、そもそも個人のやり甲斐や成長を定義すること自体、容易ではありません。例えば、ギリシャの哲学者アリストテレスは、「人生の目的とは何か」、という問いに「幸せ(幸福)になること」、と説きます。アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、「欲求五段階説(※)」で人が持つ心理的欲求を体系化し、最上位に「自己実現」を据えました。
※人には、下から「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求(所属と愛の欲求)」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階の欲求があり、低次の欲求が満たされるごとに上の欲求をもつようになる、とする考え方。

確かにそのとおりだと思いつつ、一体どうすればその領域に達するか、を考えたとき、私の中に一つの仮説が思い浮かびます。
「人は人を幸せにすることでしか幸せになれない」という仮説です。言葉を替えれば「人は自分一人だけで幸せになることはできない。自分に関わる人、会社でいえば同僚、顧客や取引先などに喜んでもらうことが自分の幸せにつながる」とする考えです。

そもそも人は、人との関係性の中に自己の存在を自覚し、人と共存・共生しながら、人に喜んでもらうことで自分の幸せや喜びを感じているように思うからです。つまり、幸せとは、関係性の中に存在すると思うのです。

では、そうした心理的領域を形成する会社には、どのような要素があるのでしょうか。
これを実践する「いい会社」から感じる要素は次の3つです。

1.価値観を共有し、共感に高める力
2.互いを尊重し、信頼を形成する力
3.相違を統合させ、価値共創力に高める力

このことについて、次週いくつかの事例を述べたいと思います。
(つづく)
鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸


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