ESG投資と「結い 2101」(その10)~ESG視点「S」と「人」個人の尊重~

(本記事は毎週金曜日に発行しているメールマガジンの再掲です)
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今回は、ESGの2つ目のテーマ「S(Social:社会性)」と、「結い 2101」の評価視点「人」の着眼点「社員の個性の尊重」との関係性について、個人的な視点で考えます。

会社は、人と社会とを結びつけ、社会の中で人の個性を発揮させる 大切な役割を担います。そのことが「S」の最重要命題であり、当社の着眼点「社員の個性の尊重」に通じる、と捉えています。そして、その結果としてもたらされる人の幸福感は、良質な関係性の中から芽生えます。総じて「いい会社」にみられる良質な関係性は、第一に「価値観を共有し、それを共感にまで高める取組み」によって形作られていると感じます。

会社としての価値観とは、自社の存在目的を謳った経営理念や、それを実現するための行動指針等に表現される思想信条でしょう。会社経営は目的達成に向けた組織的な活動ですので、ある程度、共通の目的・目標を持つ人が集うことが大前提です。オーケストラで聴衆を魅了する音楽を奏でたいと思っている人が、サッカーチームに所属してもその才能が発揮されないのと同じで、価値観の共有と個人の尊重は、密接に関係するのです。

そのため、鎌倉投信では、「経営理念を、どのような場面で、どのように共有しているか」、更には、「経営理念がその会社の意思決定や社員一人ひとりの行動にどのような影響を与えているか」に関心を持ちます。前者は「共有の度合い」、後者は「共感の度合い」を量るものでしょう。

例えば、「いい会社を目指し続ける」を基本理念 に掲げ、美容室向けにシャンプーやトリートメント等を製造・販売するコタ(株)の小田社長と話をすると、しばしば「共有」という言葉が出てきます。コタのコーポレート・ガバナンスコードにも「次世代を担う人材(後継者)の育成を図るために、『社内向けIR説明会』をはじめとする教育研修機会の拡充と質的向上を図る」ことが掲げられています。社内向けIRとは、経営理念や業務方針、実績を社員としっかり共有するための取組みで、同社が「共有」を重要な経営課題として位置付けていることがよくわかります。

「日々おこなう業務判断や選択は、全て経営理念に基づくものであり、経営理念とのずれがないかを社員自らが考える機会にしたい」、このように真意を語る小田社長の言葉は、とても印象的でした。

また、価値観の「共感」について強く印象に残っているのが、「結い 2101」の受益者と一緒に、(株)IKKへ「いい会社訪問(※)」した際の場面です。ハウスウェディングを展開する同社の社員三人と受益者が対話する場面で、受益者のお一人がこのように質問 したのです。

「みなさんにとってIKKの経営理念とは何ですか」と。
非常に答えにくい、しかし、本質を突いた問いに会場は固唾を飲みました。そして、その時の社員さんの言葉は、未だに頭から離れません。

入社して半年ほどの新入社員は、「困った時に立ち戻るものです。そこには問題解決のヒントがあります」、と答えました。
入社2年目の社員は、「私にとっては、私生活においても大切にしている指針です」、と答えました。
入社6年目の中核社員は、「私にとって経営理念は、人生を照らす光のような存在です」、と答えたのです。

間髪入れずに発せられた言葉には迷いがなく、自分の中に腹落ちした、嘘偽りのないものだと感じました。日頃から経営理念が繰り返し反芻され、自らの考えや行動を振り返る写し鏡のようになっているからこそでしょう。

もとより経営理念の受け止め方は多様であるのが自然です。大切なことは、自己の個性と共鳴させ、日々の行動の中で実践する力に換えているか否か、です。詳細は省きますが、同社には、経営理念を共有する取組みの中に、自らに問いを立てさせ、共感へと高める要素があるのです。

共感力とは、相手(お客様や同僚、広くは社会)の立場にたって物事を感じたり観たりする感性でもあります。そのことが、良質な関係性を形成する二つ目の要素「互いを尊重し、信頼を形成する力」につながり、「S」のベースになる、と感じています。
(つづく)

※「いい会社訪問」は鎌倉投信の登録商標です
鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸


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