ESG投資と「結い 2101」(その11)~ESG視点「S」と「人」信頼を形成する力~

(本記事は毎週金曜日に発行しているメールマガジンの再掲です)
鎌倉投信がお届けする「心を結ぶ」メールマガジン。是非ご登録ください。
前回のメルマガでは、会社が担う大切な役割の一つ「人と社会とを結びつけ、社会の中で人の個性を発揮させること」が、ESGの2つ目のテーマ「S(Social:社会性)」の最重要命題であり、当社の着眼点「人」を量る評価視点「社員の個性の尊重」に通じること、そして、その結果としてもたらされる人の幸福感は、良質な関係性の中から生まれることを述べました。今回は、組織において良質な関係性を築くために不可欠な要素の2つ目、「互いを尊重し、信頼を形成する力」について、個人的な視点で考えます。

会社経営とは、一人では成し得ない事業を、異なる個性をもった様々な人が集まり、互いを補完し合うことによって達成に導く組織的な営みです。そこで、異なる感性、能力、思考性を持つ人の個性をつなぎ、組織の協働力を高めるための潤滑油が、互いの「信頼感」でしょう。真の多様性は、「信頼を形成する力」の中から生まれると思うのです。

では、どうすれば信頼を形成することができるのでしょうか。いくつかの段階がありますが、まず起点となるのは、リーダー、とりわけ経営者の社員への接し方にある、と多くの会社を観て感じます。まずは、上に立つ人が、社員一人ひとりの個性に関心を示す(潰さない)接し方をしているか、否かです。

このことの大切さを教えてくれた二人の社長とのやり取りはとても印象的で、次の2つの言葉を心に刻んでいます。やろうと思えば誰にでもできることですが、とても難易度が高く、私自身、実践には程遠い状態です。

A 経営者にとって「笑顔は仕事」である
経営者や上席者が、いつもこわばった表情やイライラしていては、社員は顔色を窺い、安心して話しかけることができません。社員が、意を決しチャレンジしたいこと、異なる意見、抱える悩み苦しみを安心して言える「雰囲気をつくる」ことは、経営者にとって一番の仕事だというのです。経営者のそうした姿勢は、組織に伝播して社員同士の関係性にも影響を与え、風通しのいい社風につながります。相互の関係性から醸し出される「雰囲気は、会社の力そのもの」、といっても過言ではないでしょう。
私は、会社を訪問する際、社長や上席者の席の配置、社員との会話の様子に自然と目が向きます。そこから社内の関係性を何気なく感じることができるからです。

B 「人のために時間を使う」ことが徳につながる
Aとは別の社長と話をした際、「上に立つ者には、徳が必要だ」と言われたことがあります。私は、「そのとおりです。では、どうすれば徳を積めるのでしょうか」、と質問しました。すると、その社長はこう答えました。
「簡単です。人のために時間を使えばいいのです」、と。

短い言葉でしたが、深い意味を持つと感じたものです。社長は、単に物理的な時間を人のために使え、といったのではありません。「今、目の前にいる人に意識を集中し、真剣に向き合い、その時、自分にできる最善を尽くせ」ということを伝えたかったのだと思います。
日常のなかで、経営者や上席者が自分に意識を向けて真剣に向き合ってくれていることを感じる機会が多ければ多いほど、社員の自己承認欲求は満たされ、自信にも繋がるでしょう。ひいては自分の能力・才能を引き出す力にもなるでしょう。

組織における信頼形成の起点は、こうした日常における人との接し方にあると感じます。一方で、一瞬で信頼を壊すものとはなんでしょうか。
1、言葉と行動が一致しないとき
2、相手に対する敬意を失ったとき
3、自分自身に対する謙虚さを失ったとき
だと思っています。言葉をかえれば、この三つを常に意識していれば信頼関係が壊われることはない、ともいえるでしょう。

そして、このうちの2と3は、コミュニケーションを通じて相手に伝わるものです。コミュニケーションの方法は発言や文章に限りません。人がコミュニケーションによって影響を受ける大部分は、非言語、例えば、表情や顔色、声のトーン、話す速度、視線などからであることはよく知られていて、私も同感です。
そして、広い意味でのコミュニケーション力が、「社員の個性の尊重」を形成する3つ目の要素「相違を統合させ、価値共創力を高める力」につながります。次週、この点について考えます。
(つづく)

鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸



[関連記事]
#ESG投資と「結い 2101」