運用コラム 等金額投資 ~複雑さと距離を置く~

前回の運用コラムでは「結い 2101」における等金額投資の原則と例外を紹介しました。今回は以下のお客様の疑問に答えるべく、運用者としての考えを紹介します。

“投資先の投資配分は時価総額加重に変更してもいいのではないでしょうか?ここで言う時価総額加重とはある基準の金額を決めておき、あとは株価に任せるという方法です。”

回答の前に

「結い 2101」の投資ウェイトはシンプルな等金額を基本としています。今回のコラムでは、そのポートフォリオの有効性について考察します。「Simple is best(最善)」といいきることはできませんが、「not bad at all(それなりによい)」 と捉えられるのでは、というお話です。最後まで読んでいただけるとその根拠がわかると思います。

余談ですが…

「結い 2101」設定前に等金額ウェイトを提案した現取締役に、その理由を伺ったところ「過去に試してパフォーマンスがよかった記憶があったため」とのことでした。手前味噌で恐縮ですが、色々な試行錯誤を積み重ねてきたのだと内心感服してしまいました。
  • 提案者である取締役

もうひとつ余談です。「結い 2101」のシンプルさは、「オッカムの剃刀」(必要以上に多くの仮定を用いるべきではない)という考え方に通ずるところがあります。他にもそういう方針のファンドがあるのかと思い、「資産運用 オッカムの剃刀」と検索にかけてみました。結果はなんと…奇遇にも鎌田の昔のコラムが一番上に出てきました。今のコラムと雰囲気がやや異なり面白いです。
https://www.kamakuraim.jp/information/yuibiyori/detail/---id-862.html

コラム中で鎌田は「物事の本質は、シンプルである」と表現しています。私はそう断言できるほど経験を積み重ねていませんので、その真偽はわかりませんが、人間の思考能力・認知能力には限界があるので「シンプルな法則が有用である」と思います。


冒頭の質問に対する回答

繰り返しになりますが、「結い 2101」の基本スタンスは「いい会社は等しくいい会社なので投資ウェイトに差をつけない」というもので、今後もこの原則を継続していきます。一方、このお客様の疑問は「とはいっても、現代ポートフォリオ理論が是とする時価総額加重ポートフォリオの方が、等金額ウェイトのものより運用成績がよくなるのでは?」ということかと察します。従ってここでは、先ほどの基本スタンスからもう一歩踏みこんだ分析を試みます。結論は「等金額投資は意外と(?)合理的」です。


現代ポートフォリオ理論とは?

まず、ご質問者がおそらく前提としている現代ポートフォリオ理論を手短に振り返ります。この理論の一つの帰結は「市場ポートフォリオ(時価総額加重ウェイトのポートフォリオ)がシャープレシオ(リターンとリスクで測る運用の効率性)を最大とする効率的なポートフォリオである」です。この結論に至る出発点には平均分散分析という、投資対象のリターンの平均と分散(≒リスク)のみに着目する手法がありますので、以下では平均分散分析に基づくポートフォリオについて考察します。

この考え方をご存知の方の中には、冒頭の受益者のように「結い 2101」のポートフォリオを眺めたときに「なんで等金額?」という疑問を抱く方も少なくないかもしれません。しかし、考察してみると平均分散分析が優れているという考え方は一つの仮説にすぎないことが分かります。


なぜ平均分散分析が最適とは限らないのか?

それは「将来のリターンは事前にはよくわからないから」だと考えられます。
平均分散分析には重要な前提が置かれています。その前提とは、投資対象の期待リターンとリスク(標準偏差)を所与のものとするというものです。リスクについてはともかくとして、事前に設定したリターンの期待値(予測値のようなもの)と実際のリターンのずれは小さくありません。事前にリターンを予測することは非常に難しいものとして知られています。平均分散分析に基づくポートフォリオの投資ウェイトは、前提とするリターンの値に大きく影響を受けてしまいますので、このずれの大きさが平均分散分析のポートフォリオがうまく機能しない理由の一つだといわれています。

一方、等金額ポートフォリオであれば、過去のリターンがどうであろうと、また将来についてどのような見通しを持っていようと、等金額で保有するのみで、しばしば崩れ去ってしまうような複雑な条件を前提としていません。


過去の結果を眺めると…

過去の結果が将来の成果を保証するわけではないので盲信は禁物ですが、参考情報として実証研究を紹介します。一つ目は米国株式市場における検証です(※1)。等金額投資を含む様々なポートフォリオ構築手法を比較していますが、シャープレシオという指標で比較すると、米国株式市場では最も等金額投資が優れていたようです。

日本の株式市場だとどうなるのでしょうか。こちらは比較的最近の研究を参照しました(※2)。結論としては、検証に用いるデータによって優劣が異なり、日本では等金額投資が他の手法より優れているとは明言できないようです。これは私見ですが、明確なパフォーマンスの差が確認できないのであれば、前提条件がより少なくてシンプルな運用手法が好ましいと考えます。


まとめ

「結い 2101」の投資ウェイトはシンプルな等金額を基本としています。今回のコラムでは、そのポートフォリオの有効性と背景について考察しました。「複雑さと距離を置く」と言いつつ冗長な説明をしてしまったかもしれませんが、最後まで読んでいただきありがとうございました!
(※1)DeMiguel, Victor, Lorenzo Garlappi, and Raman Uppal. "Optimal versus naive diversification: How inefficient is the 1/N portfolio strategy?." The review of Financial studies 22.5 (2009): 1915-1953.
(※2)重田雄樹. "わが国の金融市場における等金額ポートフォリオの有効性の検証." (2020).
(資産運用部 橋本)

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月次運用報告書「結いだより」136号掲載