ESG投資と「結い 2101」(その12)~ESG視点「S」と「人」相違の統合力~

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皆様、こんにちは。鎌倉投信の鎌田恭幸です。
いつも鎌倉投信のメルマガを読んでいただきありがとうございます。

前回のメルマガでは、ESGの2つ目のテーマ「S(Social:社会性)」の中で会社が担うべき重要な役割は「人と社会とを結びつけ、社会の中で人の個性を発揮させること」であり、当社の着眼点「人」を量る評価視点「社員の個性の尊重」に通じること、そして、それを実践する上で不可欠な要素の2つ目、「互いを尊重し、信頼を形成する力」について述べました。

今回は、3つ目の要素、「相違を統合させ、価値共創力を高める力」について、個人的な視点で考えます。

先日、何気なくTwitterをみていたら、サイボウズの元副社長 山田理さんのツイートに目がとまりました。「議論するときに『賛成/反対』というけど『同じ意見/違う意見』でいいんじゃないかと思う。議論することは対立し、戦うことではない」
私も同感で、すぐに「いいね」を返しました。

組織における議論(ディスカッション)とは、個々の異なる意見や考えを対立軸に置いて賛成、反対を諮るためのものではありません。本来は、相違をさらけ出してよりよいものに統合したり、異なる視点を交えて議論したりすることによって判断の精度を高めるためにおこなうものです。

観方や考え方の違いは決して悪いことではなく、むしろ、優れた価値を生み出す必要条件といえるでしょう。逆に、異論のない満場一致の方が、不健全かもしれません。

そのため私は、投資先や投資候補先の社員さんとの何気ない会話をするときに、会議の雰囲気や自分のアイデアがどのように採用されたか、アイデアがうまくいかなかったときの社内の反応などに関心を持って尋ねます。社内の自由闊達さが垣間見えるからです。

例えば、「結い 2101」で投資する「いい会社」の1つ小林製薬では、「社員一人ひとりが主役」という行動規範を掲げ、社長を含めた全役職員がアイデアを出し合います。私たちが日頃使っている「あったらいいな!」のヒット商品は、こうして集まった年4万件もの提案の中から生まれるのです。その一方で、ヒットしなかった商品も多く展示されている同社の記念館を訪れると、同社は、成功につながらないアイデアも大切にしてきたことに気づきます。ヒット商品が生まれる秘訣は、こうした社風にある、と感じるのです。

また、面白法人カヤックが議論する際に用いるブレストでは、アイデアの質ではなく、とにかく「数」を出し、重ね合わせることにこだわります。質にこだわると、発言することに躊躇してしまい発想が狭まるからだといいます。同社は、誰でも自由に発言し、それを否定しないことが良質なアイデアにつながると考えるのです。

こうした方法は100社100通りですが、異なる意見や考え、いわば一人ひとりの個性を一段高い次元に向けて統合し、価値共創を実現するために、「自由闊達で創造的に議論できる雰囲気づくり」に取組んでいるという点で相通じるでしょう。

しかし実際には、「言うは易く 行うは難し」です。考えや意見の相違は、往々にして対立感情や嫌悪感を生み、相互の理解が妨げられ、人間関係を悪くする要因にもなりかねないからです。では、どうすれば、議論が上手く機能するのでしょうか。

いくつかの要素がありますが、以前、社内の議論の中から挑戦的な取組みがしばしば生まれるマザーハウスの山口絵理子社長に、その秘訣を伺った際の話は印象的でした。

「目的と事実にのみ焦点を充てて議論する」でした。

「誰が発言しているか」や、「発言する言葉」に反応するのではなく、「何のための議論か」、という目的を共有しながら、「発言の背景にある事実に焦点を充てて議論を進める」と教わり、大きなヒントを得ました。

「相違を統合させ、価値共創力を高める」ことは難易度が高い組織課題です。そして、ESGの2つ目のテーマ「S(Social:社会性)」、「S」に通じる当社の着眼点「人」を量る評価視点「社員の個性の尊重」の根幹をなす重要テーマの一つだと感じます。

さらにいえば、この実現に向けた取組みそのものが、組織存続の生命線ともいうべき重要な経営目標なのです。次回は、ESGの2つ目のテーマ「S(Social:社会性)」と、当社の着眼点「共生」との関係性について考えます。(つづく)
鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸

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