ESG投資と「結い 2101」(その13&14)~ESG視点「S」と「共生」~

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◇◆◇━2021年7月9日━Vol.566━
ESG投資と「結い 2101」(その13)
~ESG視点「S」と「共生」~
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これまで12回にわたり、ESGの2つのテーマ「G(Governance:企業統治)」、「S(Social:社会性)」と、「結い 2101」の投資視点「人・共生・匠」のうち、「人」との関係性について考えてきました。今回は、「S」と、2つ目の投資視点「共生」との関係性について個人的視点で考えます。

「結い 2101」では、「共生」という投資視点でそれに相応しい「いい会社」を選ぶとき、主に「顧客・取引先」「地域社会」「自然環境」といった3つの着眼点から特徴のある会社を探ります。「共生」を観るこれらの着眼点は、ESGの「S」さらには「E(Environment:環境)」に通じるでしょう。

ただし、この鎌倉投信のアプローチは、一般のESG投資でおこなわれる投資手法、「顧客や取引先に対する責任、サプライチェーンの問題の有無、地域社会への貢献などに関わる評価項目について、形式基準で網羅的に点数を付け、総合点で上位の会社を選ぶ」という方法とは異なります。鎌倉投信は、「共生における取組みが本業の中心に位置づけられること、その独自性や社会的影響度などを見極めて投資する」姿勢で一貫しています。

その一方で、2010年3月に「結い 2101」を設定し、運用を開始してから11年の間、共生というテーマを探究し続ける中で感じることは、その重要性の高まりです。主に以下の2つの観点からです。

1.人権や自然環境、ならびにこれらに関連するサプライチェーンへの問題意識の広まり

2.個社単体で成長する時代から、取引先や顧客、地域などと共に価値を共創し、共に発展する時代への変化


私の友人で、世界で少なくとも25万人以上いるといわれている「少年兵」の自立支援や、紛争があった地域の地雷除去などに取組む「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」の創設者 鬼丸昌也さんは、いつも私たちにこう語りかけます。
「世界中のあらゆる紛争は、私たちの生活と無縁ではない。世界の紛争、その結果として生まれる貧困の原因の多くはレアメタル等の資源を巡るもの。その争いの元となる資源を、知らないうちに私たち自身が使っているかもしれない。世界で起きている様々な問題を他人事にせず、関心を持ち、行動しなくてはならない」、と。

自分と世界で起こることは無縁ではない、ということでしょう。

会社も同じです。会社に関わる人は、会社と直接接点のある社員、取引先、顧客、地域、株主に留まりません。経済活動やサプライチェーンが世界中に広がったことによって、さらに先にいる人、社会や世界、自然の中で起きる(起きている)ことにも関心を持つことが求められます。つまり、会社を取り巻く「共生」の範囲と質が変わったことを意味するのです。

次回、「S」と「共生」について更に考えたいと思います。(つづく)

鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸


◇◆◇━2021年7月16日━Vol.567━
ESG投資と「結い 2101」(その14)
~ESG視点「S」サプライチェーンと「共生」~
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今回は、ESGの「S(Social:社会性)」を測る重要項目の一つ「サプライチェーン」と「結い 2101」の投資視点「共生」との関係性について個人的視点で考えます。

サプライチェーンとは、企業が商品(モノやサービス)をつくる上で必要な原材料の調達から商品を顧客に届けるまでの生産・流通プロセスをいい、ESGの「S」では、サプライヤー(供給者)全体における法令遵守、品質管理、人権尊重、情報開示姿勢などが評価されます。しかし、グローバリゼーションによって国際分業が進み、サプライチェーンはより広範に、かつ複雑化していますので、その実態を把握することは容易ではありません。

たとえば、最近では、綿の世界的産地「新疆ウイグル自治区」の人権問題がよく話題になります。昨年、オーストラリア戦略政策研究所が、同地に係る強制収容や強制労働等の実態調査をまとめ、日本企業14社を含めた外国企業(中国籍外)83社が、これによる利益を得ていると報告したことがきっかけです。

これを受け、アディダスやナイキ、H&Mといったグローバル企業が新彊産の綿を使用しない方針を表明した他、「結い 2101」の投資先の中でも、カゴメが新彊産トマトを使用しない意思を示しました。

一方で、形式基準で評価するESG投資の中でそうした問題の実態を把握することは困難でしょう。現地調査を大切にする鎌倉投信でも、取り分け確認する対象が海外となると、同様に難しい問題です。しかし、経営者の言動等からサプライチェーンの細部に心を配る経営姿勢を感じることは少なくありません。

以前、ツムラの加藤社長と面会した際、漢方の原料となる生薬の産地(主に中国)を自ら訪問し、その実態を把握しながら、農家の生活が不安定になることがないよう配慮している、といった話を伺いました。中には問屋を通すケースもありますので、100%産地を特定することは難しいかもしれませんが、そうした努力は信頼できます。

また、途上国の人と共に、現地の素材を活かして革製品やジュエリー等を製造販売するマザーハウスは、日本から遥か離れた人や地域を何よりも大切にしている会社の代表例でしょう。

さらに、「結い 2101」の投資先ではありませんが、私の友人である、長野県伊那市のケーキ屋さん「菓匠Shimizu」の清水社長は、チョコレートの原料となるカカオの産地に赴き、「ここで働く皆さんのお陰で、こんな美味しいケーキができる」、と同地の原料から作ったケーキをわざわざ届けたという話を聞いたとき、深く感銘を受けたものです。

こうした事例から大切だと感じることは、「商品づくりに関わるすべての人への眼差し」です。元をたどれば、あらゆる商品の原料は自然から生まれ、地域社会の中で採取され、取引先によって加工・運搬され、自社で商品化されます。そして、顧客に届けられ、使用後は形を変えて自然へと戻ります。

この過程は、鎌倉投信が「共生」を量る着眼点、「自然環境」×「地域社会」×「顧客・取引先」のつながりそのものです。そう考えると、「共生」によって生まれる価値は、「商品をつくる過程において関係するすべての人、自然や地域社会の豊かさの総和」、といえるでしょう。そして、鎌倉投信の「共生」にみるサプライチェーンとは、「自然環境」×「地域社会」×「顧客・取引先」のつながりであり、そのどこにも負の歪みを生じさせない関係づくりこそが、「共生」の根本テーマなのだと感じます。(つづく)

鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸

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