ESG投資と「結い 2101」(その15&16)~ESG視点「S」と「共生」~

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◇◆◇━2021年7月21日━
ESG投資と「結い 2101」(その15)
~ESG視点「S」と「共生」 価値共創~
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皆様、こんにちは。鎌倉投信の鎌田恭幸です。
いつも鎌倉投信のメルマガを読んでいただきありがとうございます。

今月に入り鎌倉投信の役職員のワクチン接種(希望者)が順調に進んでいます。
当社が加入する健保組合の職域接種のほか、いくつかの取引先が声をかけてくださり、本当に有難いと思いました。
常日頃から取引先やお客様と丁寧に付き合い、敬意を持ち、貢献する姿勢を持つことの大切さを改めて感じました。

さて、前回は、ESGの「S(Social:社会性)」の重要項目の1つ、「サプライチェーン」と「結い 2101」の投資視点「共生」の関係を考えました。
今回は、その点を個人的視点でもう少し堀り下げます。

通常、ESG投資で企業のサプライチェーンを評価する時、自社だけではなくサプライヤー(供給者)においても法令遵守、品質管理、人権尊重などが適切になされているか否か、をアンケート等で確認します。
一方、鎌倉投信では、それらを当社の投資視点「共生」を量る着眼点「自然環境」「地域社会」「顧客・取引先」から、その取組みの独自性や質の高さや本気度等を量りますので、アプローチが根本的に異なります。

例えば、「結い 2101」の投資先の1つ、プラスチック容器等を製造販売するエフピコ(本社、広島県福山市)では、リサイクルの工程で重度の知的障碍を持つ人々が活躍しています。
彼らが根気と正確性が求められる仕事に一所懸命に取組むことによって、同社のリサイクルの効率が高まり、本業における競争優位性につながっています。
鎌倉投信は、同社の障碍者法定雇用率12.7%という高さもさることながら、難易度の高い重度障碍者の雇用、本業との直結性を高く評価しています。

そして、当社の投資視点「人」で量るその取組みは、さらに「共生」へとつながっています。
具体的には、エフピコさんが商品を供給するスーパーなどにも障碍者雇用のノウハウを提供し、人財の多様性を社会に広めていることに注目しています。
これによって、同社の顧客であるスーパーは、人手不足の中で人財を確保しつつ多様な雇用機会を創出し、顧客や社会からの共感や信用を高めているのです。
こうした価値創造の連鎖は、単に所定の要件を満たすか否かをチェックするESG評価から測ることは難しいでしょう。
観るべきポイントは、独自性、質の高さ、本気度であり、さらには個社を超えて、取引先や顧客等との価値共創につながるか否かでしょう。

また、家庭用石油ファンヒーターや加湿器等を製造販売するダイニチ工業(本社、新潟県新潟市)は、部品や原材料を供給する取引先を下請けとは呼びません。
価値を共創するパートナーとして協力工場と呼んで対等な取引をおこなっています。
例えば、同社が取扱う商品が季節性のものであったとしても、敢えて通年生産をおこなうことで協力企業への発注を安定化させています。
同社が在庫リスクを100%負い協力企業には一切負担をかけません。
ここに協力企業と価値を共創するという「本気さ」を感じます。

さらに、アウトドア用品等を製造販売するスノーピーク(本社、新潟県三条市)は、地元燕三条の職人と共に商品開発をおこなうケースが少なくありません。
世界中のファンを魅了する同社の大人気商品 焚火台やペグ(杭)、ダッチオーブンは、何百年にわたって承継され、時とともに洗練されてきた鋳物成型技術や金属加工技術を守る地元燕三条の職人を大切にしているからこそ共創できた商品、といえるでしょう。

これらの例から改めて感じることは、鎌倉投信の評価視点「共生」で量るべきものとは、「商品をつくる過程において関係する、すべての人、自然や地域社会の豊かさの総和」である、ということです。
鎌倉投信が考えるリターン(価値)の定義、「資産形成×社会形成×豊かなこころの形成」に通じるものがあります。

言葉を換えれば、「共生」に求められる視座とは、社内外すべての関係者とともに、どれだけの価値を共創しているか、つまりサプライチェーンではなくバリューチェーン(価値共創力)にある、といえるかもしれません。
次回は、価値共創時代に求められる個社を超えたマネジメント能力について考えたいと思います。(つづく)

鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸


◇◆◇━2021年7月30日━
ESG投資と「結い 2101」(その16)
~ESG視点「S」と「共生」~
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皆様、こんにちは。鎌倉投信の鎌田恭幸です。
いつも鎌倉投信のメルマガを読んでいただきありがとうございます。

前回は、ESGの「S(Social:社会性)」の重要項目の1つ、「サプライチェーン」と「結い 2101」の投資視点「共生」との関係を紐解きながら、
鎌倉投信が主に3つの着眼点「顧客・取引先」「地域社会」「自然環境」から量る「共生」とは、突き詰めれば「多様な関係先と価値を共創する力」に行き着く、という観方を書きました。
今回は、その背景についてです。

そもそも「共創(Co-Creation)」は、米国ミシガン大学教授C.K.プラハラードとベンカト・ラマスワミが提唱した概念で、「企業がさまざまなステイクホルダーと協動することで、共に新たな価値を創造すること」と定義されます。
これは、鎌倉投信の志(経営理念)の中で謳う「和」の精神に通じるものでしょう。
近年では、上場企業の統合レポート等の中で「ステイクホルダーとの価値共創」といった表現をよく見かけますので、一般化したと感じます。

では、なぜ今、個社を超えた価値共創のマネジメント力が問われるのでしょうか。
私は、その背景に3つの変化があると考えています。
(1)情報発信者のパワーバランスの変化
(2)異なるものの融合がもたらす価値提供の変化
(3)(自然を含めた)社会課題に対する意識の変化
です。

(1)情報発信者のパワーバランスの変化
近年、企業が消費者と共にアイデアを考えた商品や、他社とのコラボ商品等をよくみるようになりました。
消費者があらゆる情報に容易にアクセスできる時代になったことで、企業と個人の情報の非対称性(格差)がなくなり、
さらには、SNS等を通じて個人の情報発信力が高まったことにより、商品選び(ビジネス)の主導権が企業から消費者にシフトしました。
本当の意味での消費者志向が求められる時代になったともいえるでしょう。

(2)異なるものの融合がもたらす価値提供の変化
情報通信技術の急速な進化等により、技術から生み出される提供価値の領域が大きく変化しています。
例えば、大手自動車会社が大手通信会社等の異業種と連携する動きが加速しています。
その背景にある次世代の街づくりモデル「スマートシティ構想」では、自動運転するクルマが街中を走り様々な情報をビッグデータ解析して情報を価値化したり、
利用する電力は街全体で最適に管理され、家庭ではセンサーを使って健康状態を把握して未病・予防に役立てたり、といったこと等が視野に入っています。
異なる技術を取り入れ、クルマの提供価値の領域が変わると、自動車メーカーを、自動車産業の枠で捉えること自体、難しくなるでしょう。
そして、価値提供の領域を変え、従来型の産業構造の枠を超えることこそが、企業存続のために不可欠な挑戦ともいえるでしょう。

(3)(自然を含めた)社会課題に対する意識の変化
地球温暖化や環境破壊、廃棄ロスなどの問題等に国際社会や消費者が厳しい目を向ける中、企業は原料の調達、商品化、販売、さらには使用後の社会・環境への影響に至るまで、その全過程に責任を持つ時代になりました。
使用済の商品を回収し、リサイクルする過程では、敢えてライバル企業とも手を組む動きもみられます。
企業の商品価値は、社外の様々なステイクホルダーと共に築く「価値の創造的連鎖の仕組み」によって量られる時代になったのです。

ESGの「S」では、多様なステイクホルダーとの取り組みを、企業活動のリスクや、サプライチェーンにおける問題の有無といったモニタリング的視点で捉えようとしています。
しかし、こうした関係性のマネジメントを、「イノベーションに向けた価値統合のマネジメント」として捉えなくては、企業の本質的価値や持続性を量ることは困難でしょう。
個社を超えたステイクホルダーとのマネジメント力が競争優位性をもたらす時代になっている今、「共生」を量る重要性が一段と高まっていると感じます。(つづく)

鎌倉投信株式会社 
代表取締役社長 鎌田恭幸

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