会社四季報で振り返る「いい会社」のあゆみ ~アミタホールディングス~ その2

【前回の振り返り】
以前に執筆した会社四季報に関するコラムをきっかけに、社内から「四季報を通じて投資先の『いい会社』を分析してみたら面白そう」との声がありました。しかし、約20年分の四季報を遡って分析するのは一苦労。軽い押し問答の末、最後はおだてられてトライすることになりました。

今回取り上げる投資先のいい会社は、アミタホールディングスさん。9月に開催予定の受益者総会で同社の熊野会長に登壇いただくので、よい機会かな…と。
さて、「結い 2101」がアミタさんに投資を開始したのが2010年3月。ということで、2010年新春号から2021年夏号までの12年間、47冊の四季報を東京オリンピックの開会式を見ながら遡りました。

その1でも述べましたが、事業性とは、ビジネスモデル、経営力、財務力、技術力など、事業の継続性や成長性を有していることと考えられ、そのひとつの答えが業績となります。果たして、アミタさんの業績推移は?

|業績の悪化と海外事業

2010年から2017年までの期間は、業績予想記事では、【増益】というポジティブな見出しも散見されますが、【低調】【下振れ】【赤字】といったネガティブな見出しの方が多いです。事実、2015年から2017年まで3期連続で最終赤字となりました。2018年9月期には、自己資本比率が5.4%まで低下し、当時の決算短信に「継続前提に重要事象」と継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象または状況が存在すると認識されることが明記されました。「ヤバイよ、ヤバイよ」状態です。この間、筆者は鎌倉投信に在籍していませんでしたが、当時の運用担当者はアミタさんとの対話を重ね、「いい会社」として株式を保有し続けました。その根拠を探るべく、後ほど四季報の記事とあわせて確認します。

業績面の悪化に至った要因を材料記事から探っていきます。2010年から2012年までの見出しには【拡大】【拡充】【強化】といった上昇志向のワードが並びます。具体的には、リサイクルの新拠点投資や人員増強を進めていました。この間の業績は、売上高が増加しましたが、先行投資負担から利益面は低調に推移しました。2013年から2017年までの材料記事では【海外開拓】【海外事業】といったワードが頻出します。アミタさんはマレーシアでの再資源化事業、ベトナムとパラオでは資源循環モデル事業の調査、そして台湾ではシリコン関連のリサイクル工場の稼働準備をしていました。

アミタさんの主力ビジネスである産業廃棄物の再資源化は、100%リサイクルです。再利用可能なものを分別して、残りはゴミとして燃やしてしまう「なんちゃってリサイクル」とは訳が違います。アミタさんがリサイクルしてきた産業廃棄物は4,000種類以上と多く見えますが、100%リサイクルを前提とすると、実は受入れ範囲は限定的となります。当然ながら、廃棄物を排出するメーカーも限定され、限られた排出メーカーの企業活動にアミタさんの業績も左右されます。そこで、排出量が多く、アミタさんが再資源化を得意とする、廃棄物処理で海外に打って出るのというのは自然な流れだったのかなと思います。

2017年にリサイクルを開始したマレーシア工場は順調に立ち上がり、収益貢献してきました。しかし、2016年に太陽光発電用パネルに使用されるシリコン関連のリサイクルを目的に立ち上げた台湾工場は、取引先の設備変更で廃棄物の受入れ量が減少する見通しとなったことを受けて、減損損失の計上を余儀なくされたことが2018年春号の四季報に記されています。さらに、太陽光発電パネルメーカーの製造拠点が中国にシフトすると、アミタさんの取引先が台湾から撤退したことを受けて、2019年秋号の四季報には「台湾原料調達難で年内撤退」と記されていました。台湾事業はわずか3年で幕を閉じましたが、撤退の意思決定があと1年遅れていたら、再起不能となっていたことでしょう。しかし、ここからアミタさんは未来デザイン企業に向かって変貌していきます。

|危機からのV字回復

再資源化では、台湾の設備を北九州に一部移転させました。半導体シリコンウェーハの世界シェアでは日本メーカーが上位を占めます。半導体関連の廃棄物の安定した受け入れが見込まれる国内で再資源化を強化し、業績のV字回復を図りました。四季報の記事見出しにも【連続増益】【上向く】【上振れ】といったワードが並びます。

そして同時に過去から積み重ねてきたことが結実するタイミングを迎えました。それは、社会デザイン事業の礎ともなっています。関連記事は2011年新春号の「アジア初のMSC(海洋管理協議会)認証機関に認定」です。MSC認証とは、第三者認証制度に基づく持続可能な漁業で獲られた水産物の証です。アミタさんはMSC認証のほかにもFSC(森林管理協議会)認証機関にも認定されています。第三者認証によって水産・森林資源の枯渇を保護し、持続可能なサプライチェーン普及の一翼を担っています。

また、2014年春号に「廃棄物管理業務を請け負うサービス開始」という記事がありました。これはアミタさんのオペレーターとエキスパートがメーカーの指示のもと廃棄物管理の事務作業を代行するものです。創業から蓄積してきた100%リサイクルの知見をサービス化したものです。アミタさんが自社でリサイクル施設を建設するよりも圧倒的なスピード感をもってリサイクル技術が普及していくことが期待されます。
さらに、過去12年の間に日本は甚大な災害に見舞われました。その都度、アミタさんは、2011年秋号「東北拠点に災害廃棄物の再資源化」、2016年夏号「熊本震災で発生した産業廃棄物を処理」など廃棄物のリサイクルを通じて復興に貢献してきました。ただ、単なる復興だけでは終わりません。2014年秋号「宮城県南三陸町で生ごみ等の処理によるガス発電と肥料生成に取り組む」という記事にあるとおり、現在の循環型地域社会モデルにつながるビジネスに着手しました。地域住民や地元の事業者を巻き込んだ再資源化のビジネスです。地方都市は、財源不足・過疎・コミュニティ崩壊など、様々な課題に直面するなか、これらの課題を事業でどう解決すべきかに対して、アミタさんは答えを出しました。

|鎌倉投信が継続保有し続けた根拠

アミタさんが業績面で苦戦し、「ヤバイよ」状態だった際、当時の運用担当者が事業性と社会性を兼ね備えた「いい会社」であると判断し、株式を保有し続けた根拠は何だったのか。ここからは筆者の憶測も含まれますが、台湾事業など不採算事業から撤退することで危機を脱すること。さらに、認証サービスや循環型地域社会モデルなど、アミタさんには潜在的な社会ニーズを感知し、解決策を提供する能力があり、ビジネスとして収益化するところまで発展させることができるとの確信めいたものがあったのではないかと思います。その確信は、お互いの信頼関係のもと、腹を割って話すことができたからこそもたらされたものとも思えます。

|まとめ

四季報を通じてアミタさんの12年間のあゆみを振り返り、企業活動には、特に危機時において、再現性があると感じています。未来は予測できませんが、企業活動の再現性をもとに「すでに起こった未来」が見えてくるのではないかと考えています。だから会社四季報は手放せません。
(余談)12年分の四季報を遡っていた際、ひとつ欠号がありました。血眼で家中探していたら、妻が昼寝用の枕にしていました。暑い夏にはちょうどいいそうです。
(資産運用部 五十嵐和人)


月次運用報告書結いだより138号掲載
「いい会社」企業情報