「結い 2101」運用報告 社会形成 脱炭素を考える上での大事な視点

脱炭素を考える上での大事な視点

今年4月、菅首相(当時)は日本の温室効果ガスの排出削減目標を従来の2013年度比26%から20%上乗せして、46%削減する新しい目標を掲げました(※1)。また、8月に発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」との記載があり(※2)、脱炭素に向けた国内や海外の機運が高まっています。一方で、行政や企業がおこなう脱炭素の取り組みについて、「本当にこれは環境にいいのか?どうも怪しい。」と思えるものも増えているように感じます。

今回は脱炭素を考える上で欠かせない評価手法である、LCA(Life Cycle Assessment)を紹介します。LCAとは、「製品の資源採取から原材料の調達、製造、加工、組立、流通、製品使用、さらに廃棄にいたるまでの全過程(ライフサイクル)における環境負荷を総合して、科学的、定量的、客観的に評価する手法」です(※3)。製品が生まれる前から 役割を終えて廃棄されるまで、トータルの環境負荷がわかります。

このLCAを使って、例えばエコバッグ(マイバッグ)はレジ袋に比べて1枚あたりのCO₂排出量が約50倍になるという調査結果が出ています(※3) 。つまり、50回以上同じエコバッグを使わないとレジ袋よりも環境に負荷を与えている可能性があることになります。レジ袋が「悪」だとは必ずしもいえない結果です。
  • 図表1:レジ袋とマイバッグの環境負荷の比較
    (出所:一般社団法人 プラスチック循環利用協会 「LCAを考える」)

「結い 2101」の投資先でもLCAをおこなっている会社があります。例えばTOTOさんでは、ライフサイクルの中に占める商品使用時のCO₂排出量が全体の93.6 % と算定しています(※4)。ウォシュレットを始めとしたTOTOさんの多くの商品は同社が定める標準的な使用期間 が約20年と長い ためにこのような結果になっており、この結果をもとに商品の環境負荷低減に積極的に取り組みCO₂削減、省エネルギー、節水につながる商品開発を推進しています。
  • 図表2 TOTOグループの事業活動における段階ごとのCO2排出量比較(出所:TOTO)

次に9月5日に実施した「いい会社訪問」 (※)のユーグレナさんのバイオ燃料をLCAの視点で見るとどうでしょうか。ミドリムシが成長過程で光合成によって大気中のCO₂を吸収しているため燃料燃焼時のCO₂と相殺され、「カーボンニュートラル」が実現できるとのことでした。しかし残念ながらユ ーグレナさんは、まだLCAが実施できていません(※5)。バイオ燃料も「ミドリムシの培養、燃料の製造、運搬、使用・・・」とトータルでの環境評価が必要でしょう。バイオ燃料には脱炭素に貢献できる大きなポテンシャルがあると思いますので、ユーグレナさんのLCAに向けた取り組みや進捗は今後の調査活動のなかで確認していきます。

資産運用部では、月次で社会課題に関する部内勉強会を実施しています。勉強会では社会課題の構造の体系的な整理と、テーマを絞った調査分析により知見を深めています。 イメージや主観にとらわれることなく 、本業を通じて環境問題 をはじめとした社会課題の解消に真に貢献する企業を見極めていきたいと思います。
(資産運用部 長田)
(※)「いい会社訪問」は鎌倉投信の登録商標です。


出所:首相官邸
(※1)https://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0422kaiken.html

出所:環境省
(※2)https://www.env.go.jp/press/109850/116628.pdf

出所:一般社団法人 プラスチック循環利用協会
(※3) https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf6.pdf

出所:TOTO
(※4)https://jp.toto.com/company/csr/environment/product/index.htm

出所:ユーグレナ(LCAの実施に関する同社の見解の記載があります。)
(※5)https://www.euglena.jp/companyinfo/sustainability/environment/

月次運用報告書「結いだより」139号掲載
「いい会社」企業情報