運用コラム 流動性リスク規制

1.概要と背景

2022年1月より投資信託の流動性リスク規制に関する内閣府令(※1)ならびに投資信託協会の「投資信託等の運⽤に関する規則」等の改正(※2)が適用されました。具体的には、投資信託で保有する有価証券等の市場流動性(換金性)を把握し適切に管理するというものです。

市場流動性には、投資した株式などの金融商品を換金しようとした時に買い注文が少なく、思うような価格で売却できないことも含まれます。規制適用の背景には、2010年代に米国においてハイイールド債に投資するファンドが市場流動性の低下から解約に応じられなかった事例や、Brexit(英国によるEU離脱)決定に呼応して複数の不動産ファンドが解約を停止したなど、受益者の利益を損ねる事例が発生したことがあります。

2.流動性リスク規制の主な内容

流動性リスク規制への対応として、社内規則等による流動性リスク管理態勢の整備や、目論見書への記載による流動性リスクの注意喚起が求められます。さらに、流動性リスクの評価では、保有する有価証券等を流動性リスクに基づき4分類に区分し(図表1)、個別投資信託の商品性を考慮のうえ、4分類のうち①高流動性資産には下限保有比率を、④非流動性資産には上限保有比率を設け、それぞれ超過しないようモニタリングをおこないます。

保有比率の上下限を超過した場合には受益者への開示を含め社内規則等にそって適切な対応をとること、また、株価の暴落など金融市場に不測の事態が発生した場合や、多額の解約請求が発生した場合を想定したストレステストも定期的に実施することなどが必要となります。

図表1

3.「結い 2101」での対応

「結い 2101」では、企業規模を問わず、投資家の経済的豊かさと社会の持続的発展の両立のために、事業性と社会性を兼ね備える「いい会社」に投資してきました。結果として、相対的に市場流動性が低いといわれる中小型株の構成比率が高めとなっています。

一方、流動性リスク規制への対応は2019年から着手し、株式市場での出来高の少ない銘柄の保有比率を引き下げるなどの調整をしてきました。「結い 2101」では「『いい会社』は等しく『いい会社』である」との考えのもと等金額投資を基本としますが、実際には個別銘柄の流動性を考慮した等金額投資の枠組みで運用しています。

「結い 2101」では商品特性を考慮し、高流動性資産(現金部分含む)①の下限保有比率を5%、非流動性資産④の上限保有比率を50%と設定しています。現状の保有比率は、高流動性資産(現金部分含む)①は50%前後、非流動性資産④は30%台で推移しています。また、リーマンショックや欧州債務危機など株式市場の暴落時の環境に近いストレスを負荷した場合でも保有比率を超過する可能性は極めて低いとのテスト結果がでています。

「結い 2101」に限らず、アクティブ運用戦略には適正規模があります。「結い 2101」では流動性リスク等を勘案したうえで、商品特性を維持しながら運用が継続可能な適性規模の上限(キャパシティ)を800億円~1,000億円と試算しています。現状の純資産総額に比べて倍程度の水準ではありますが、これまでと同様に、新規投資先を拡充していくことで個別投資先の流動性リスクの分散を図り、ファンド全体の流動性リスクをコントロールしていく考えです。
(資産運用部 五十嵐)
※1:金融商品取引業等に関する内閣府令及び投資信託及び投資法人に関する法律施行規則の一部を改正する内閣府令
https://www.fsa.go.jp/news/r1/shouken/20200410.html

※2:「投資信託等の運用に関する規則」等の一部改正
https://www.toushin.or.jp/static/publiccomment/ichiran/11133/