運用コラム 「いい会社」の見つけ方
「誰よりも多くの石ころをひっくり返した人が宝石を見つけることができる」
これは、1800万ドルの資産を140億ドルに成長させた伝説のファンドマネージャーとして知られるピーター・リンチ氏の言葉であり、筆者の銘柄発掘の拠り所となっています。
「結い 2101」の受益者の方々から「いい会社をどのように見つけているのか?」や「投資する会社を見つけるきっかけは?」といった質問を受けることがあります。その都度、「ふふっ、それは秘密です」とお答えしてきましたが、実はここだけの話、銘柄発掘に至る体系的なプロセスは存在していないのです。逆にない方がよいと思っています。なぜならば、画一的なプロセスから宝石(いい会社)がこぼれ落ちることを避けたいからです。結局、冒頭のピーター・リンチ氏の言葉にあるように、沢山調査することに勝るものはないと考えています。
一方、時間は誰にとっても平等で限りがあります。筆者の場合、1社あたりの企業調査に費やす時間は、事前準備1時間、取材1時間、取材後の振り返り0.5時間の計2.5時間。1日4社の調査をすると10時間を費やすこととなります。実際の取材のなかでは、開始5分で「あっ、違うな」と感じることが少なからずあり、その場合、残りの55分をいかに消化させるかに全てを集中します。限りある時間のなかで重要になるのが、調査対象の「あたりをつける」という作業です。以下、これまでの筆者の経験から銘柄発掘のきっかけとなった事例を紹介します。
① 「会社四季報」から気になる会社をピックアップする
約3,800社の上場企業を一覧でチェックできるという点で重宝しています。ピックアップのポイントは、業績変化や株主・役員の異動、四季報記者の独自視点でまとめた材料記事などです。四季報のことを語るとこれだけで文字数オーバーとなってしまいますので、さわりだけにとどめましたが、四季報の読み方についてさらにお知りになりたい方は、過去の運用コラムをご覧ください。
「私流の会社四季報の読み方Part.1」
https://www.kamakuraim.jp/information/yuibiyori/detail/---id-1167.html
「私流の会社四季報の読み方Part.2」
https://www.kamakuraim.jp/information/yuibiyori/detail/---id-1209.html
② 新規上場企業をすべて調査する
年間100社程度ある新規上場(株式公開)企業を上場前にすべて調査します。これは筆者のなかでは「入口をおさえる」という感覚です。新規上場企業のなかにはユニークなビジネスモデルもあり感動すら覚えます。新規上場企業との面談では、多くの場合、社長など経営者が懇切丁寧に説明してくれます。上場後に会社が成長していくと経営者に簡単にはお会いできなくなりますが、「以前に会ったことがある」という強みがその後のアポ取りでも効果を発揮します。そのため、初回の取材ではなるべく印象付けることを意識して面談に臨んでいます。
③ NEDOのプロジェクトをフォローする
NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じて、イノベーションの創出を支援する組織・団体です。リスクが高い革新的な技術の開発や実証を行い、成果の社会実装を目指しています。国の政策や予算に基づき、産業技術力の強化に向けた様々なプロジェクトが組成され、大企業からスタートアップ企業まで様々な企業が参画しています。先端技術の知識習得だけでなく、参画する企業の開発姿勢なども垣間見れる貴重なものとなっています。
④ 身近なものに気を配る
自分が暮らす街、日ごろ利用するお店、日常的に利用しているサービスの中にも銘柄発掘の機会は存在します。「これはすごいぞ!」と思えるものに出会えたり、継続してみていると商品やサービスの変化を感じとれたりします。妻のお伴でスーパーマーケットに行く際は、筆者はもっぱら商品をひっくり返して製造会社をチェックする怪しい人物と化しています。
⑤ 「いい会社」みつけ隊
上記④の拡大版です。1人の人間の行動範囲は限られます。そこで、多くの人の気づきや関心を銘柄発掘のきっかけにすることを目的に、鎌倉投信の有志で構成された銘柄発掘集団がサブタイトルの組織です。残念ながらコロナ禍の行動制限もあり意見の持ち寄り機会は少なくなってしまいましたが、再度復活させたいと思っています。
⑥ まったく興味のない本を読む
企業調査をしていて感じることは、自身の興味の範囲でしかアンテナが立たないということです。このままでは視野が狭くなっていきます。そこで筆者は、自身にまったく接点のない、興味関心すらない本を読んで興味の範囲を広げるように心がけています。新刊の書籍代は高いので、リユースショップの安売り日を狙ってまとめ買いしています。選び方は簡単。目をつぶって指差した先にある本を買っています。最近では、(大型免許を持ってないのに)トラックドライバーの日常に関する本や(庭がないのに)園芸に関する本、(ルールも知らないのに)ラクロス上達バイブル的な本などを購入しました。これらのお陰と信じたいですが、銘柄発掘における着眼点が増えている気がしています。
⑦ 「いい会社」のことは「いい会社」に聞く
これは(筆者が勝手につくった)「『いい会社』ネットワーク仮説」に基づきます。企業経営者は業種の垣根を越えて情報交換をおこなったり悩み事を相談したりすると聞きます。企業の価値観において共通点や親和性を発見し、ネットワークが生まれてきても不思議ではありません。「いい会社」は「いい会社」とつながっているはず。その仮説にもとづき、取材の際には「社長が思う『いい会社』を教えてください」と必ず確認します。具体的な社名をいただけたら、その会社にすぐさま取材を申し込んでいます。
他にも、「様々な業界の展示会」や「官報」なども銘柄発掘のきっかけとして活用していますが文字数制限のため、またの機会がありましたら紹介します。
今回は、銘柄発掘のきっかけを探す取組み事例を紹介してきました。調査対象が特定されたあとの評価・選定プロセスはファンドマネージャーの間でブレがないよう統一していますが、銘柄発掘のきっかけづくりは属人的な要素があります。資産運用部のメンバーにも筆者の事例を紹介することはありますが、「真似しろ!」と求めることはありません。様々な「きっかけづくり」があってよいと思いますし、他のメンバーがおこなっていて有効そうなものは取り込んで進化させていきたいと考えています。
これは、1800万ドルの資産を140億ドルに成長させた伝説のファンドマネージャーとして知られるピーター・リンチ氏の言葉であり、筆者の銘柄発掘の拠り所となっています。
「結い 2101」の受益者の方々から「いい会社をどのように見つけているのか?」や「投資する会社を見つけるきっかけは?」といった質問を受けることがあります。その都度、「ふふっ、それは秘密です」とお答えしてきましたが、実はここだけの話、銘柄発掘に至る体系的なプロセスは存在していないのです。逆にない方がよいと思っています。なぜならば、画一的なプロセスから宝石(いい会社)がこぼれ落ちることを避けたいからです。結局、冒頭のピーター・リンチ氏の言葉にあるように、沢山調査することに勝るものはないと考えています。
一方、時間は誰にとっても平等で限りがあります。筆者の場合、1社あたりの企業調査に費やす時間は、事前準備1時間、取材1時間、取材後の振り返り0.5時間の計2.5時間。1日4社の調査をすると10時間を費やすこととなります。実際の取材のなかでは、開始5分で「あっ、違うな」と感じることが少なからずあり、その場合、残りの55分をいかに消化させるかに全てを集中します。限りある時間のなかで重要になるのが、調査対象の「あたりをつける」という作業です。以下、これまでの筆者の経験から銘柄発掘のきっかけとなった事例を紹介します。
① 「会社四季報」から気になる会社をピックアップする
約3,800社の上場企業を一覧でチェックできるという点で重宝しています。ピックアップのポイントは、業績変化や株主・役員の異動、四季報記者の独自視点でまとめた材料記事などです。四季報のことを語るとこれだけで文字数オーバーとなってしまいますので、さわりだけにとどめましたが、四季報の読み方についてさらにお知りになりたい方は、過去の運用コラムをご覧ください。
「私流の会社四季報の読み方Part.1」
https://www.kamakuraim.jp/information/yuibiyori/detail/---id-1167.html
「私流の会社四季報の読み方Part.2」
https://www.kamakuraim.jp/information/yuibiyori/detail/---id-1209.html
② 新規上場企業をすべて調査する
年間100社程度ある新規上場(株式公開)企業を上場前にすべて調査します。これは筆者のなかでは「入口をおさえる」という感覚です。新規上場企業のなかにはユニークなビジネスモデルもあり感動すら覚えます。新規上場企業との面談では、多くの場合、社長など経営者が懇切丁寧に説明してくれます。上場後に会社が成長していくと経営者に簡単にはお会いできなくなりますが、「以前に会ったことがある」という強みがその後のアポ取りでも効果を発揮します。そのため、初回の取材ではなるべく印象付けることを意識して面談に臨んでいます。
③ NEDOのプロジェクトをフォローする
NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じて、イノベーションの創出を支援する組織・団体です。リスクが高い革新的な技術の開発や実証を行い、成果の社会実装を目指しています。国の政策や予算に基づき、産業技術力の強化に向けた様々なプロジェクトが組成され、大企業からスタートアップ企業まで様々な企業が参画しています。先端技術の知識習得だけでなく、参画する企業の開発姿勢なども垣間見れる貴重なものとなっています。
④ 身近なものに気を配る
自分が暮らす街、日ごろ利用するお店、日常的に利用しているサービスの中にも銘柄発掘の機会は存在します。「これはすごいぞ!」と思えるものに出会えたり、継続してみていると商品やサービスの変化を感じとれたりします。妻のお伴でスーパーマーケットに行く際は、筆者はもっぱら商品をひっくり返して製造会社をチェックする怪しい人物と化しています。
⑤ 「いい会社」みつけ隊
上記④の拡大版です。1人の人間の行動範囲は限られます。そこで、多くの人の気づきや関心を銘柄発掘のきっかけにすることを目的に、鎌倉投信の有志で構成された銘柄発掘集団がサブタイトルの組織です。残念ながらコロナ禍の行動制限もあり意見の持ち寄り機会は少なくなってしまいましたが、再度復活させたいと思っています。
⑥ まったく興味のない本を読む
企業調査をしていて感じることは、自身の興味の範囲でしかアンテナが立たないということです。このままでは視野が狭くなっていきます。そこで筆者は、自身にまったく接点のない、興味関心すらない本を読んで興味の範囲を広げるように心がけています。新刊の書籍代は高いので、リユースショップの安売り日を狙ってまとめ買いしています。選び方は簡単。目をつぶって指差した先にある本を買っています。最近では、(大型免許を持ってないのに)トラックドライバーの日常に関する本や(庭がないのに)園芸に関する本、(ルールも知らないのに)ラクロス上達バイブル的な本などを購入しました。これらのお陰と信じたいですが、銘柄発掘における着眼点が増えている気がしています。
⑦ 「いい会社」のことは「いい会社」に聞く
これは(筆者が勝手につくった)「『いい会社』ネットワーク仮説」に基づきます。企業経営者は業種の垣根を越えて情報交換をおこなったり悩み事を相談したりすると聞きます。企業の価値観において共通点や親和性を発見し、ネットワークが生まれてきても不思議ではありません。「いい会社」は「いい会社」とつながっているはず。その仮説にもとづき、取材の際には「社長が思う『いい会社』を教えてください」と必ず確認します。具体的な社名をいただけたら、その会社にすぐさま取材を申し込んでいます。
他にも、「様々な業界の展示会」や「官報」なども銘柄発掘のきっかけとして活用していますが文字数制限のため、またの機会がありましたら紹介します。
今回は、銘柄発掘のきっかけを探す取組み事例を紹介してきました。調査対象が特定されたあとの評価・選定プロセスはファンドマネージャーの間でブレがないよう統一していますが、銘柄発掘のきっかけづくりは属人的な要素があります。資産運用部のメンバーにも筆者の事例を紹介することはありますが、「真似しろ!」と求めることはありません。様々な「きっかけづくり」があってよいと思いますし、他のメンバーがおこなっていて有効そうなものは取り込んで進化させていきたいと考えています。
(資産運用部 五十嵐)
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