上に立つ者の条件

「上に立つ者の条件」の著者、江川淑夫さんは私にとって人生の大先輩であり、経営者として良き指導を下さる先生でもあります。

当時、上場企業の中で最年少取締役に就任され、グローバルな事業展開、数々のM&Aを手掛けてきた兵です。今は現役を退き、個人でコンサルティングを行われていますが、70歳半ばのご年齢とは思えないほど明晰で物事の本質を捉える眼力には敬服します。このところ数カ月に一回程度、経営全般について厳しいご意見を頂きながら勉強させてもらっています。金融機関の経験しかない私にとって、製造業の現場で世界を相手に数々の修羅場を経験してきた江川さんのお話は私の未熟さを補う貴重な財産だと思っています。

今日も、資産運用部長の新井と一時間ばかり鎌倉投信の経営や企業評価の視点等について指導を受けてきました。

江川さんとのやり取りは常にFAXか手紙。事前にお送りする資料には何度も目を通し、オフィスに行くと、いつも問題点、課題点がB4のノート数枚に的確に認められています。お話そのものは耳の痛い話ばかりですが、経営者として数々の難題に取り組んでこられた濃厚なご経験に裏打ちされた言葉には強い説得力があります。

今日は、「実績のない私たちが信用を得るための要諦について」「企業の戦略、攻防の両面性について」「企業評価の視点、とりわけ世界に通用する日本の技術評価の視点について」ご教示頂きました。

江川さんの著書「上に立つ者の条件」は、私のバイブルの一つです。
時代を見通す江川さんの眼力は、10年前に書かれたこの著書そのものが証明書です。私が共感しているメッセージの一部を紹介します。

● 企業は単なる箱、建造物ではない。そこで働く<人間の質>によって盛衰する。企業は、働く人の動機を満足する魅力によってエネルギーの質・量が決まる。
● これからは時代と与件が変化して、大組織なるがゆえに安泰といえなくなりつつある。むしろ大組織のほうが、変化対応力に欠けて、リスクが大となる。目下は、その変換途中にあるので、大組織は依然として感性と動作が鈍い。
● 世界の最高水準がどれほどのものか、を知っていることは<力>である。軸足と尺度が明確になるので<揺れ>が少なくなる。
● 上に立つ者は、多忙であってはならない。暇であれば一流である。多忙ということは、力量の限界を白状している。権限移譲の仕分ける、実行が、不得手であれば、その時点までがその人の限界である。
● 世界を分母とする時代。世界の場で通用するためには、個人として、一人の人間として、自立し、確立していることが求められる。組織の大小・知名は脇役である。組織対組織の仕事であろうとも、主役は特定の個人である。
● 組織のためになっても社会のためにならないことは否定される。

私にとっては、何度も読み返したくなる本の一つです。